次世代パジェロに向けた試金石か 三菱自動車、トライトン投入の真意
同社に聞いたところ、受注した人の88%が上位のGSRを選んでいるという。価格は、GLSが498万800円に対し、GSRは540万1000円(いずれも税込み)と高い。購入者は20代以下が10%で、30代が21%。最も比率が高いのが40代で32%。つまり40代以下が全体の6割を占めており、他の車種からの乗り換えも82%を占める。 若年層が支持する背景として考えられる理由の一つが、買いやすくするための残価設定ローンの用意だろう。最上位のGSRで、車両状態が既定の条件を満たしていれば、3年後の残価率は59%と高めであり、購入時に登録諸費用のみを負担すると、月々の支払いは均等払いで8万円以内に抑えられるのだ。 24年3月からは、1年と2年間の短期リースプラン「ちょこっとT-Drive」も展開し、こちらは2年後の残価率が約72%とさらに高い。車両代や税金、メンテナンス費など含めて、支払額は月々約9万円。趣味性が高く一定のニーズある車種が欲しい若年層にとって、残価設定ローンの存在がトライトン人気を下支えしていることが考えられる。 ●「チーム三菱ラリーアート」も復活 三菱自動車の広報部は次のように明かす。「トライトンは、数を売ることよりも、定番モデルの一つとして、長く販売していくことを重視したいと考えている。ラインアップに存在することが三菱車全体の性能アピールの場となり、トライトンをきっかけに来店した顧客が他の三菱車を買うことにもつながってほしいと考えている」 実際同社は23年3月に発表した中期経営計画で、発売時期や日本導入は未定としながらも、今後5年間でグローバルで全16車種の投入を予告しており、その中で戦略的にうたう車種の一つとして新型トライトンやトライトンベースの「PPV」を挙げる。PPVとは、ピックアップトラックベースのSUVのことであり、現在の三菱自動車のラインアップでは海外専売車のパジェロスポーツが該当する。 三菱自動車は、ラリーチーム「チーム三菱ラリーアート」を復活させ、22年から「アジアクロスカントリーラリー」にも初参戦。早くも総合優勝を果たし、23年の大会では新型トライトンを送り込みエントリーした3台が完走し、しかも総合3位で入賞するなど結果を残している。 ピックアップトラックの国内市場規模は年間1万台規模で、1ナンバーでの登録が必要で毎年車検が必要となるうえ、高速料金も普通車よりも割高な中型車扱いでランニングコストも高い。広い駐車スペースが必要になるなど、所有するためのハードルは高い。しかし、手に入れたいと考える40代以下のファンがいるわけで、中期経営計画で明かすようなトライトンベースのSUVがもし本当に登場すればどんな反応を示すか、期待は膨らむばかりである。 また中期経営計画の車種には3列シートSUVも含まれており、PPVと3列SUVとのパジェロの関連性は不明だが、既に日本の販売現場では、パジェロ復活との噂も流れていると聞く。 4WD車やSUVを中心としたラインアップで、復活を目指す三菱自動車。その第一歩が少なくとも順調なだけに、新型トライトンに続く一手が楽しみである。
大音 安弘