見た目は小さい島でも実は「富士山」に匹敵する海底火山! 島ができて消滅するまで(レビュー)
二〇一三年、東京の約一〇〇〇キロメートル南方にある西之島付近の海底火山が突然噴火し、大きな話題を呼んだ。噴火はその後も続き、今や西之島は面積約四・四平方キロメートルという堂々たる島に成長している。一方、海底火山「福徳岡ノ場」は二〇二一年に噴火して島を形成したが、数ヶ月で崩壊し、姿を消した。火山噴火とはかくもドラマチックな現象かと、驚いた方も多かっただろう。 前野深『島はどうしてできるのか 火山噴火と、島の誕生から消滅まで』は、世界各地の火山噴火を通して、地球のダイナミズムを描いた一冊。丹念な現地調査に基づく、新たな島形成と消滅の研究成果が、わかりやすく紹介されている。たとえば先の西之島は、実のところ海底から三〇〇〇メートルも突き出し、裾野の広がりは直径三〇キロメートルにも及んでいるという。見た目は小さな島だが、海水の下には富士山にも匹敵する巨大な山が潜んでいると聞くと、何か空恐ろしい思いにとらわれる。 本書終盤では、火山の引き起こす各種災害についても詳しく語られる。山体崩壊や岩屑なだれなど、その種類も多様だ。ギリシャの古代文明滅亡の遠因となったサントリーニ火山、古代ローマの大都市ポンペイを一夜にして消し去ったヴェスヴィオ火山など、都市や文明を破滅させるほどの巨大噴火は歴史上何度も起きてきた。全世界の活火山の一割近くが存在する国に住む我々は、もう少し火山のことを知っておくべきだ。 [レビュアー]佐藤健太郎(サイエンスライター) 1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞。2011年、化学コミュニケーション賞。著書に『炭素文明論』『「ゼロリスク社会」の罠』『世界史を変えた薬』など。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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