評価額360億円、「AIで採用を変える企業」を生んだ21歳トリオの野望
人工知能(AI)を用いた人材マッチングサービスのMercor(メルコア)は先日、大手ベンチャーキャピタルのベンチマークやピーター・ティールを含む投資家から3200万ドル(約46億円)を調達した。3人の21歳の大学中退者らが創業した同社の収益は、年間数千万ドルに達する見通しで、毎月50%のペースで伸びており、すでに黒字化を果たしている。 2023年8月、ジョージタウン大学の2年生を終えたばかりのブレンダン・フーディは、同じ大学のスリヤ・ミダとハーバード大学に進んだアダーシュ・ヒレマスらを、大学を辞めるように説得した。高校の同級生だった3人は、その年の1月にインドのエンジニアと米国のスタートアップをマッチングする企業のメルコアを立ち上げて、わずか数カ月で年間収益が100万ドル(約1億4300万円)の規模に成長させていた。 フーディの話を聞き終わったミダは、ヒレマスに向かってこう言った。「なぁ、これって大変なことになると思う?」 メルコアの創業者たちに言わせれば、これまでの道のりはそれほど「大変なこと」ではなかった。彼らのソフトウェアは、AIを用いて求職者を審査して面接し、適切なポジションにマッチングするもので、創業から2年足らずの間に10万件以上の面接を実施し、30万人を評価した。3人は、今年に入りピーター・ティールが立ち上げた大学中退者のための起業家育成プログラムのティール・フェローシップに選ばれた。 サンフランシスコを拠点とするメルコアは9月19日、ベンチマークが主導したシリーズAラウンドで3200万ドル(約46億円)を調達したと発表した。ティールやジャック・ドーシーも参加したこのラウンドで同社の評価額は2億5000万ドル(約360億円)とされた。このラウンドには、OpenAIの取締役を務めるQuora(クオーラ)CEOのアダム・ディアンジェロや元米財務長官のラリー・サマーズも個人で出資し、ベンチマークの新たなパートナーのビクター・ラザルテが、メルコアの取締役に就任した。 メルコアのCEOを務めるフーディは、「僕らは、世界中の優秀な人材が十分な機会を得られていない現状に着目した。AIを活用して人材の評価プロセスを自動化することで、この非効率を解消できると考えている」と述べている。 メルコアの人材マーケットプレイスは、OpenAIなどの最新のAIモデルに微調整を加えた大規模言語モデル(LLM)を活用してマッチングを行っており、求職者は、履歴書をアップロードした後にAIとの20分間のビデオ面接を受ける。彼らはその後、マーケットプレイス内のすべての求人とマッチングされ、より専門的な職種の場合は、さらにカスタマイズされたAIとの面接に進むことになる。 ■高校の「ディベート大会」が起業のきっかけ メルコアは、雇用者に対してパートタイムやフルタイムのいずれの形でも、柔軟に対応できる優秀な候補者を迅速に紹介することを約束している。同社の最大の人材プールは、インドに置かれているが、米国の人材も紹介可能という。また、メルコアが扱う人材の分野は多岐にわたり、エンジニアリングやプロダクト開発だけでなく、デザインやオペレーション、コンテンツ関連も含まれる。 フーディによると、名前を明かせない複数の主要なAI研究所がデータ関連の人材を探すために同社のプラットフォームを利用しており、コンサルティングやエンジニアリング、金融、法律などの分野の企業も利用している。メルコア自体も今年2月までこのタレントプールに依存していたが、現在は15人の従業員を雇用している。