評価額360億円、「AIで採用を変える企業」を生んだ21歳トリオの野望
ピーター・ティールからの支援
メルコアが独自に開発した求職者のパフォーマンスの予測ツールは、すでに人間のリクルーターを上回る能力を実現しており、フーディーはその仕組みを11月に公開する論文で共有すると述べている。「人間の能力を、人間よりも正確に予測するツールには、すでに莫大な経済的価値がある。僕らの会社は、それに加えてその他の要素を取り込むことが、長期的な競争力とより大きな経済的価値につながると信じている」とフーディは言う。 3人が人材マッチングサービスに興味を持ったのは、サンノゼの名門私立高校Bellarmine College Preparatoryの討論チームで競い合ったことがきっかけだった。政策のディベートの競技会で彼らは、数カ月間をかけてリサーチを行い、議論を展開した。ある時、発展途上国の労働市場の不公平さについて議論していた彼らは、ミダとヒレマスがともにインドからの移民の親を持つこともあり、インドのエンジニアと米国のスタートアップをつなぐビジネスを思い立った。 「大手での職務経験がない、あるいは特定の学歴がないという理由で採用プロセスで応募者の大半が不当に排除されるのは、間違っていると感じた。もっと実力主義的なアプローチで採用方法を構築することで、社会を変えられると思った」とミダは語る。 3人が大学に進んだ後に立ち上げたメルコアは、フーディがCEOとしてプロダクトの立案と営業を行い、COOのミダはオペレーションと企業契約を担当、CTOのヒレマスはエンジニアリングと機械学習を担当している。彼らは、大学を中退した後にそれまでの拠点のニューヨークを離れ、昨年秋にサンフランシスコに引っ越してフルタイムで事業に関わり始めた。 ■ピーター・ティールからの支援 そして今年1月にメルコアは、ゼネラルカタリストが主導したシードラウンドで360万ドル(約5億円)を調達した。さらに3月に3人は、ティール・フェローシップに選出されて10万ドル(約1400万円)の資金を授与され、他の大物投資家やテック業界のエグゼクティブのネットワークへのアクセスを獲得した。 当時のメルコアは既に黒字化を果たし、利益を伸ばしていたため、3人は資金調達に特に興味がなかったが、ベンチマークのラザルテからのオファーを受けて、CEOのフーディは一度会ってみることにした。彼がラザルテに興味を持った理由の1つは、ラザルテが自身で立ち上げたゲーム開発のスタートアップ、Wildlife Studios(ワイルドライフ・スタジオ)を評価額30億ドルの注目企業に育てあげたことだった。 「私は、投資家として多くの起業家と話をするが、『これは本当に素晴らしい』と思える出会いはごく稀だ。しかし、フーディに会った時に彼が特別な人であることはすぐに分かった。そして、人々を最適な仕事にマッチングさせるという彼のビジョンが、素晴らしいものだと思った」と、メルコアのシリーズAを主導したラザルテは述べている。 メルコアの競合としては、先日ウーバーの元幹部をCEOに起用したアフリカ発の人材分野のユニコーン企業のAndela(アンデラ)などが挙げられる。また、人材分野の既存の大手もAIを使ってメルコアと同じサービスを立ち上げるかもしれない。 フーディは、メルコアが、リンクトインで求人を行っている企業に直接アプローチする場合があることを認めたが、ほとんどの求職者は、同社のウェブサイトで利用可能な履歴書のフィードバックなどのツールを利用するために、自分の意志でサイトを訪れていると語った。 フーディは、メルコアのゴールが、「統合されたグローバルな労働市場を構築して、それぞれの人に最適な仕事を提供できるようにすることだ」と述べた。ミダは、もっとシンプルに、「10億人の人々に仕事を提供できるとしたら、本当に幸せだ」と語った。
Alex Konrad