ウクライナ軍がATACMSでロシア西部の弾薬庫を攻撃 子弾数千発を被弾した可能性
米国のジョー・バイデン大統領が遅ればせながらウクライナに、米国製の長距離ミサイルをロシア領内の目標に対して使用することを許可したと報じられたのは、米国時間17日のことだった。 報道が流れたあと、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は「結果はミサイルがみずから示すことになるだろう」と語った。 はたしてウクライナ時間の19日未明、最大1.7t近くある米国製ATACMS弾道ミサイル何発かが、ウクライナ軍の発射機から闇夜に紛れて、ウクライナとの国境からおよそ100km離れたロシア西部ブリャンスク州カラチェフの弾薬保管庫に向けて一斉に発射された。 ウクライナ軍がロシア国防省ロケット・砲兵総局第67兵器廠を狙った理由は明らかだ。少なくとも3.5平方km程度の広さがある第67兵器廠は、ロシア国防省の大規模な弾薬保管施設のひとつなのだ。ウクライナ軍は10月8日にもドローン(無人機)でこの施設を狙って攻撃していた。 初期のタイプは慣性誘導、それ以降は補正のためGPS(全地球測位システム)誘導も追加されたATACMSが、この攻撃でどの程度の損害を与えたのかは、現時点でそれほど明らかでない。ロシア国防省は、ATACMS6発のうち5発を撃墜し、1発を損傷させ、その破片が軍事施設の敷地内に落下して火災を引き起こしたと主張している。 ロイター通信によると、米当局者はATACMS8発が発射され、ロシア側が撃墜したのは2発だと述べている。 ロシア国防省は、火災はすぐに消し止められたとも説明している。だが、19日朝にソーシャルメディアで拡散した動画には、第67兵器廠の敷地とされる場所から激しく炎が立ち上る様子が映っている。攻撃で大きな被害が出た証拠のように見受けられる。 バイデン政権は射程が最長で300kmあるATACMSを供与してからおよそ1年間、ウクライナ側の懇願にもかかわらず、それをロシア領内の目標に対して用いることを認めなかった。そのためウクライナは、1990年代に開発され、クラスター弾頭型では数百~一千個近くの子弾がばらまかれるATACMSを、ウクライナ国内のロシア占領地域にあるロシア軍の飛行場や補給基地、あるいは集結したロシア軍隊などに対する攻撃に限定して使ってきた。