イサム・ノグチ庭園美術館の「ケフィエ禁止令」に従業員らが抗議。「来館者への配慮」が逆効果に
対応に追われる全米の美術館
パレスチナ保健当局によると、10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃以来、イスラエルによるガザへの空爆と地上攻撃により4万人の命が奪われた。この状況を黙認しているとして、ニューヨークをはじめとするアメリカのアート施設はパレスチナ支持派による批判に直面してきた。メトロポリタン美術館(MET)からブルックリン美術館に至る美術館の上層部は、観客の懸念への対処に追われており、それが新たな危機にもつながっている。例えば今年3月、ニューヨーク近代美術館(MoMA)は、同館の警備員がケフィエを持った2人の来館者に入館を禁じたことを謝罪した。2人のうちのひとりはブルックリンを拠点とするライターのパク・ジョヒョン(Ju-Hyun Park)で、かれはX(旧Twitter)でこの件について、「恥知らずで人種差別的な反パレスチナ政策」と断じた。 MoMAは当時、声明を通じて、「入手可能なすべての情報を収集した結果、訪問者のバッグの中に入っていたケフィエが抗議行動で用いられる横断幕と誤認されたことがわかりました」と述べていた。同館では今年2月、500人以上のデモ参加者がロビーを占拠し、パレスチナのための抗議行動を行っていた。 一方、パレスチナを公に支援しているアーティストやキュレーターの中には、自分たちのイベントや展示が同意なしに中止あるいは変更されたり、レジデンスのオファーが取り消されたという者が少なくない。こうした状況を受け、ニューヨークを拠点とする非営利団体「検閲反対全国連合」(NCAC)は5月、「Art Censorship Index」を発表した。それによれば、ピッツバーグのフリック美術館がイスラム美術展を延期したことや、インディアナ大学のエスケナージ美術館がパレスチナにルーツを持つアーティスト、サミア・ハラビーの回顧展の一部を中止したことなど、複数の事例が挙げられている。
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