新入幕・獅司が2連勝 待望の初懸賞ゲット!半分は戦時下の家族へ 「うれシシです」は封印
「大相撲九州場所・2日目」(11日、福岡国際センター) 新入幕の獅司が、武将山を下して2連勝とした。ウクライナ出身で、収入の半分を戦時下にある故郷の家族に送る心優しい力士。白星を積み重ね、勇姿を届ける。大関陣は初日に続き安泰。琴桜が平戸海、大の里が王鵬、豊昇龍が小結若元春をそれぞれ退けた。大関返り咲きを目指す霧島は、痛恨の2連敗を喫した。 獅司が新入幕場所で好スタートを切った。武将山の当たりをかわして右をのぞかせ、左上手を引いて力強く寄り切った。自身のしこ名を使って喜びを表現するフレーズ「うれシシです」は封印したが、「緊張は初日より大丈夫。つかまえられてよかった」と充実した表情で振り返った。 初土俵から4年半。193センチの体格を武器に力を付け、23年名古屋場所でウクライナ出身力士として初の関取昇進を果たした。その後は左上腕の負傷で右四つの精彩を欠く時期はあったが、女子相撲の重量級で3度の日本一に輝いた日大出身の部屋のおかみさんである栄美さんの助言を受け、左四つを習得。2場所連続で勝ち越しを決め、今場所から雷部屋初の幕内力士となった。 すしが好物で、初めて食べた日本食は回転ずし大手「スシロー」。関取となって月給は100万を超えたが、意外にも高級すしは食べたことがないという。それは戦時下にある故郷の両親へ仕送りをするため。関取になる以前から手当の半額を送っており、今でもそれは変わらない。「ママ、パパ、大変だから。獅司、頑張らないといけない。いっぱいお金をウクライナに送ります」。家族を思い、遠く離れた異国の地で戦っている。 新入幕1勝を挙げた初日は、母と電話し「おめでとう。頑張ったね」とねぎらわれた。この日は初の懸賞も手にし、「頑張ります。全部」と獅司。故郷を勇気づけるため、家族のため、心優しい力士が1年納めの場所を沸かしていく。 ◆獅司 大(しし・まさる) 本名ソコロフスキー・セルギイ。1997年1月16日、ウクライナ南部のザポリージャ州メリトポリ出身。6歳からレスリングを始め、15歳で相撲に転向。17年欧州選手権で優勝し、世界ジュニア選手権では3大会連続で重量級3位となった。18年11月に来日。当時の入間川部屋に入門し、20年春場所で初土俵を踏んだ。23年名古屋場所で同国出身として初の関取となった。193センチ、171キロ。