J1再開あと3日…浦和レッズ興梠慎三が自粛期間中に地元で続けた”飲食テイクアウト”という恩返し「自分にできることはピッチでの100%プレー」
2005シーズンから紡がれてきたプロサッカー人生で、コンディション維持の秘訣を聞かれるたびに「脂ものなどを気にせずに、好きなものを食べるのが一番いい」と、33歳のベテランは節制とはやや対極に位置するような言葉を残してきた。新型コロナウイルス禍で自粛を強いられても、もちろん食生活のルーティンを変えなかったなかで、好きなものをテイクアウトすることに恩返しを求めたわけだ。 「(経営が)苦しい、とまではいっていないはずですけど、それでもお客さんが来ないなかで、ちょっとでも手助けできたらいいなと思って。(お店の人も)もちろん喜んでくれていましたし、僕も自粛中はずっと家メシだったので美味しくいただきました。(体重は)いまは普通です。頑張って落としました」 無邪気に笑いながらこう語った興梠は、大記録に王手をかけて再開を迎える。あと2ゴールをあげれば史上6人目のJ1通算150ゴールに到達するなかで、通算185ゴールで歴代1位に立つFW大久保嘉人(現・東京ヴェルディ)をはじめとして、上位5人はいずれも今シーズンのJ1クラブに所属していない。つまり、堂々のトップスコアラーとして5人との距離を縮めていくことになる。 アントラーズで最後にプレーした2012シーズンから継続中の連続2桁ゴールは、レッズでの7年間を加えて昨シーズンで8年連続となってJ1記録を更新した。そして、レッズで決めたゴール数を98として迎えた、2月の湘南ベルマーレとの開幕戦でも同点ゴールをゲット。あと1つでこちらも史上6人目の、レッズでは初めてとなる同一チームでのJ1通算100ゴールにも到達する。 「非常にハードなスケジュールになるので、全試合に出ることは多分できない。試合数は去年に比べて減ると思われる状況でも2桁(のゴールを)取ることが、やっぱり真のエースだと思っているので」 今月31日には34歳になる興梠は、再編成された過密日程のもとで変わる戦いへの覚悟をすでに固めている。週に2試合を戦う場合はコンディションが重視されるだろう。今シーズン限定で交代枠が「3」から「5」に増えたなかで、昨シーズンもレッズ内で2位を記録した、2468分に達したプレー時間も減少するかもしれない。それでも、エースストライカーと呼ばれる男に課される使命は変わらない。 「交代枠が5人ということで時間やペース配分を考えずに、最初から飛ばせるのかな、という気はしています。90分間出ることが特に前目の選手は少なくなってくると思うので、自分がピッチの上にいるときに、なるべくたくさんの得点を奪えればと思っています」 4日の再開初戦は昨シーズンの覇者、横浜F・マリノスをホームの埼玉スタジアムに迎える。実はレッズに移籍した2013シーズン以降のマリノス戦では、12試合に出場して無得点が続いている。無観客試合改めリモートマッチを視聴する熱いファン・サポーターへ、今度は自らのゴールを介して至福の喜びを届けるために、寡黙な点取り屋は残された時間のなかで心身のコンディションを高めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)