共産党大会に首脳会談 北京で思う米中「大国」関係、民主主義、そして日本
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むしろ、私が中国滞在中に気になったのは、「民主主義」のマイナス面が強調され、それが共産党の一党支配を正当化する根拠とされていた点だ。 曰く、民主主義は(資本主義下の企業のように)短期的な利益しか鑑みることが出来なくなっている。つまり政治家や政党は次の選挙で勝つことしか眼中になく、有権者に迎合するばかりで、中長期的な国家戦略を打ち出すことができない。その結果、「トランプ現象」や「ブレグジット(英国のEU離脱)」というポピュリズム的状況、あるいは粗野な排外主義が蔓延する状況に陥っている。
その点、中国共産党は(人権などに関して制約があるとしても)人口14億人もの大国を導き、50年、100年という大局的な国家利益を追求する上では、実に優れた体制、というわけだ。 中国にいると東南アジアや中東、とりわけアフリカに関する報道が多いことに気づく。「民主主義」というモデルは途上国にはハードルが高い。むしろ「中国式」のガバナンスの方が多くの国々の現実にマッチしているというメッセージもそこには透けて見える。 もちろん「民主主義は最悪の政治形態らしい。ただし、これまでに試されたすべての形態を別にすれば、の話であるが」というウィンストン・チャーチル元英首相の有名な格言を以って、民主主義を擁護することは容易い。独裁主義や権威主義は短期的な政策目標を実現する上では一見効率的だが、中長期的な政治的安定性という点ではリスクが高い、という指摘も定番だ。 しかし、「中国式」を礼賛しないとしても、民主主義を手放しに礼賛していれば良い時代でもなさそうだ。民主主義のデメリットやコストにはどう対応してゆけば良いか。とかく日本国内における議論は選挙制度や議会運営の是非をめぐる、技術的な話になりがちだが、中国やロシアが政治的影響力を拡大している国際政治のパワーポリティクスの現実を前に、より根源的な再考ないし説得力の再構築が求められている。