共産党大会に首脳会談 北京で思う米中「大国」関係、民主主義、そして日本
10月から11月にかけて中国を舞台にした大きな政治的イベントが続きました。中国共産党大会とトランプ米大統領の中国訪問です。党大会で自らの権力基盤を強化した習近平国家首席は、異例ともいえる歓待ぶりでトランプ大統領を迎え入れました。その北京の地で見えたものとは。アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に寄稿してもらいました。 【図】“陸と海のシルクロード”中国の「一帯一路」構想とは?
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10月半ばから5週間ほど北京大学に滞在した。5年に一度の共産党大会とトランプ大統領初の訪中という二大イベントを現地で体感し、100人近い有識者や専門家と意見交換する機会を得た。
トランプ氏の訪中に関して、現地のテレビが繰り返し流していたのが米中首脳の記者会見での「私は中国を非難しない」(”I don’t blame China”)という同氏の発言だった。貿易関係をめぐる発言だが、北朝鮮問題で中国の協力を必要としているとはいえ、中国との貿易不均衡をやり玉に上げ、「為替操作国」認定をちらつかせた一年前の大統領選キャンペーン時とは随分とトーンダウンした感は否めない。 おまけに中国の人権状況をめぐる批判も封印。中国側は安堵感を覚えると同時に、自国の影響力増大を再認識しているかのようだった。 米国側は中国が欲する「新型大国関係」(”a new type of major country relations”)という表現に乗らないよう細心の注意を払っていたが、中国側は壮大な紫禁城を二人の“皇帝”(=習近平氏とトランプ氏)が訪れているかのような映像を国内外に流布することでその既成事実化を図っていた。 2500億ドル超の商談契約はトランプ氏にとっての「お土産」となったが、法的拘束力はなく、しかも不履行の可能性も十分ある。中国は知的財産権に関して米国から大幅な譲歩を求められることもなかった。米国内では今回の訪中の成果の乏しさを批判する声も少なくない。 しかし、覇権国と新興国が軍事衝突する「トゥキディデスの罠(※1)」を避けたという点で、とりあえず米中双方の面目を保った今回の訪中は成功だったとも言えよう。