アスリートの活躍に欠かせない休養 群雄割拠のリカバリー市場を紐解く
2024年シーズンからMLBのロサンゼルス・ドジャースに加入し、移籍1年目でワールドシリーズ制覇に貢献した大谷翔平選手が睡眠による休養を重視していることは多くの人に知られている。大谷選手は2017年から寝具メーカーの西川と睡眠コンディショニングサポート契約を結び、体に合った寝具の提供などを通じて継続的なサポートを受けている。
アスリートの活躍と深い関係性にある「休養」
今やアスリートにとって休養(リカバリー)は運動(トレーニング)や栄養(バランスの取れた食事)と同じか、それ以上に大事なアスリート活動を長く続けるための要素となっている。かつては練習やトレーニングを長時間行うことがアスリートの成長にとって重要だと思われていたが、人体に関する科学的研究が進むにつれ、試合でのパフォーマンスを高めるには筋肉や脳をしっかり休ませるのも大事ということが分かってきた。 昭和の時代のプロ野球選手は睡眠時間を削って夜の繁華街で飲み歩くことが武勇伝として語られていたが、そんな選手はもはや絶滅危惧種となっている。大谷選手がお酒をほとんど飲まないこともよく知られているが、その理由の一つは睡眠の質が下がるからである。飲酒が睡眠の質を下げることはさまざまな研究によって明らかになっている。 では睡眠の質を上げるにはどうしたらいいか。この分野の研究も加速度的に進んでいる。大谷選手とサポート契約を結んでいる西川は、2009年にマットレス「エアー01」、2010年にピロー(枕)「エアー3D」を発売し、アスリートの睡眠の質を上げる寝具を次々と送り出してきた。 ちょうど同じ時期に株式会社ベネクスというベンチャー企業が神奈川県、東海大学と産学官連携事業を開始し、2010年2月にナノプラチナなどの鉱物を含む独自素材を練り込んだ繊維を使って開発したリカバリーウェアを発売した。リカバリーウェアとは睡眠時に着用すると血行を促進し、疲労回復をサポートしてくれるパジャマのことである。これがスポーツ関係者の間で「疲労回復効果が実感できた」とクチコミで広まり、大ヒット商品となった。