八村塁が“協会批判”で揺れるバスケ界「(ホーバスHCと)ボタンの掛け違いが始まったのは…」「誰かひとりが悪者というわけでもない」
“この日はまるで覚悟を決めたかのように語りだした――”。現地11月13日、NBAロサンゼルス・レイカーズの八村塁(26歳)は試合後の会見で日本代表に対する思いを口にした。これまで多くを語ってこなかった八村の発言とあって、大きな議論を呼んでいる。NBA、日本代表を長く取材するジャーナリスト宮地陽子氏にその真意を読み解いてもらった。〈全2回の2回目/前編から続く〉 【変わりすぎ写真】「ガタイが全然ちがうわ…」八村塁18歳当時の豪快ダンク「NBAで活躍するいまと比較」(他100枚超) 八村が指摘したもう1つの問題は代表のコーチ。名前こそ出していないが、現男子代表ヘッドコーチのトム・ホーバスのことを指しているのは間違いないだろう。ホーバスは東京オリンピックで女子代表HCを務め、それまでも長年、女子チームのコーチをしてきた。 ホーバスのコーチングは、厳しいことで知られる。男子代表のヘッドコーチになってからは選手の体調を見て練習量を減らしたり、選手への指示のしかたにも気を使うようになったが、それでも1日2回練習をするなど、NBA基準で考えると練習量は多かった。試合中に選手に怒鳴る場面も多く見られた。 もっとも、八村以外の男子代表選手たちからはホーバスの厳しさに対する批判は聞いたことがなく、むしろ、ホーバスのコーチングのおかげで成長できたなど、感謝するコメントが多い。表向きに批判することを抑えている可能性もあるが、ホーバスのことを信頼している選手が大半のように見えた。
構築できなかった信頼関係
ひとつ、八村が他の選手と違うのは、ホーバスとの関係が浅いことだ。他の選手はW杯予選のときからホーバスとの関係を築いてきた月日があり、信頼関係があるからこそ、厳しい指導も成り立っていたものだったのではないだろうか。八村の場合はその時間がなく、ホーバスとの信頼関係が築けたかというと、否と言わざるをえない。また、現役NBA選手という立場でリーグやチームから練習の制限もあり、それがホーバスのやり方と合わなかったという事情もあった。 もともと、ホーバスと八村の関係は、2人が会う前のボタンの掛け違いから始まっている。去年のFIBAワールドカップ後に沖縄市役所で開催された記者会見中の、ホーバスHCのコメントだ。 W杯でアジア1位の成績を収めた日本は、パリ五輪出場権を獲得。この会見で「NBAシーズンへの準備を優先させてW杯には出場しなかった八村塁と、パリ五輪に向けてどうコミュニケーションを取っていくか」と聞かれたホーバスHCは、次のように答えた。 「彼がやりたいんだったら、彼から声かけていいと思います。私たちはスタイルは変わらないです。だから彼が来るんだったら、私たちのバスケをやります。やりさせます(やらせます)。当たり前。彼は入ってほしいけれど、彼がやらないんだったらこのメンバーでいいチームを作りましょう。自信あります」 八村のことを突き放したようにも、軽んじているようにも聞こえる言葉に、八村や彼のエージェントは激怒したという。後にホーバスと協会は、ホーバスにとって母国語でない日本語で語ったことで誤解が生じたとして、釈明のステートメントを出して、一件落着したようにも見えたが、そのわだかまりは大きかった。
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