なぜ中日の開幕投手は謎に包まれているのか…与田監督がいまだ“沢村賞”大野雄大を開幕投手に指名していないワケ
「雄大は2018年はゼロ勝でしたが、2019年、2020年とフル回転です。そりゃ負荷がきますよ。僕は沢村賞を取ったことがないのでわかりませんが(笑)想像を絶する疲労度のはずです。しかも新型コロナの影響があります。初めて味わう環境の中での準備不足もあり、我々だけでなく各チーム共に怪我人が多く出ました。これまでのアスリートの常識が通用しないシーズンは今年も続きます。シーズン終了が後ろにズレ込み、12月、1月の自主トレ期間にも新型コロナの影響はあり規制の中での練習となりました。どの選手も満足な練習、精神状態でオフは過ごせていないでしょう。筋肉もずっと緊張状態が続いているはずなんです。それは目に見えないもの。選手もどこかで怖さというものを抱えています」 だからこそ与田監督がオフに大野に伝えたのは開幕投手ではなく「マイペース調整」だった。大野が昨年投げた148回2/3は阪神の西勇輝を1イニング上回ってセの最多である。 与田監督は大野にこんな話をしたという。 「心身ともに一度、“ほぐし”だな。来年のキャンプに入る頃にも、おそらくまだほぐれていないだろうから、一度、ほぐして、そこから締めていけばいい。自分の調整でいい。無理はするな」 沖縄・北谷キャンプでは序盤からブルペンに入って投げ込んで肩作り、フォーム固めをしていくのが大野の例年のスタイルだったが、今季は異例のスロー調整となった。ブルペンに入るのはワンクールに一度。ペースを落とした。119球を投げ込んだ日もあったが、シート打撃に投げたのが21日。対外試合登板の予定は明日27日の阪神戦(北谷)となっている。 開幕投手に関する指揮官の考え方には、「143分の1」と割り切るのか、「143分の143」と重要視するか、の二通りにわかれる。与田監督は、開幕投手論とエース論をリンクさせて、こういう考え方を持っている。 「開幕は投手にとってステイタスでしょう。でもエースとは何をすべきか?を問えばシーズンのトータルでどれだけの数字を残すか、なんです。開幕へバタバタと焦らせる必要はないんです」 まだキャンプで対外試合に登板をしていない大野を開幕指名しない理由も納得である。 もう一人の開幕投手候補の福谷浩司(30)も大野と同じくスロー調整のキャンプを続けている。昨年は、規定投球回数には届かなかったが、ローテーションを守り、キャリアハイの92回を投げた。防御率2.64、8勝2敗の数字も立派だったが、彼にも大野同様、目に見えない新型コロナ禍の未体験の疲労が襲い掛かっている可能性がある。