「算数が解ける子」はどんな力を持っている?10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXが教える、算数の力を伸ばす「センス」の身につけ方
◆算数は「思考」と「習得」の両方大事 「習得」した知見を、「思考」して活用する 「学びて思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)し、思うて学ばざれば則(すなわ)ち殆(あやう)し」 これは論語の一説で、「基本的な習得はするけれど、自分なりに考えることをしなければ、つまり聡明ではない」と伝えています。そして、自分で考えることはするけれど、基本的なことを学ぶ姿勢を持たなければバランスが悪いともいっています。 つまり、この文章では、学びとは「思考」と「習得」がセットであると説明しているのです。 「思考」とは、考える力のこと。自分の持っている知識を掛け合わせたり、過去の経験から仮説を立てたりする能力です。 「習得」とは、コツコツと勉強や練習を積み重ね、身につけていくことです。 この2つのバランスをとることは、算数を学ぶときにも、とても重要になります。 しかし、現在の日本の教育はどうしても「習得」に重きを置きがちになっています。 学生時代を思い返すと、試験前日に徹夜で公式を覚えた人もいらっしゃるかもしれません。多くの大人たちはインプット中心の学びの中で生きてきました。そうした経験から、どうしても「習得」中心に考えてしまうところがあるのです。 丸暗記して詰め込むといった「習得」の比重が大きくなる問題点は、「思考」に結びつきにくくなることです。
◆本質的な「習得」とは ただ、本質的な「習得」とは、丸暗記することではありません。 数学の定理や公式は、過去に数字に向き合ってきた人が効率的に問題を解けるように体系的にまとめたものです。そのおかげで、私たちは算数や数学に関連する問いを短時間で理解したり解決したりすることが可能になりました。 少し大げさですが、人類の進歩により、現代の私たちは合理的に算数・数学の問題に取り組めるようになったのです。 これらの定理や公式を覚えることが「習得」だと思われるかもしれませんが、本来の「習得」とは、詰め込み型の暗記ではなく、先人がまとめた知見を適切なポイントでいかす力のことを指します。 つまり、算数の練習問題は、過去にまとめられた知見を「習得」しながら、それを活用できるように「思考」していくことが目的になってくるのです。 Check! ・「思考」とは、考える力のこと。「習得」とは、少しずつ勉強を積み重ねて知見を身につけること ・「習得」は単なる暗記ではなく、過去に導きだされた知見を適切なポイントでいかす力でもある ※本稿は、『10万人以上を指導した中学受験塾 SAPIXだから知っている算数のできる子が家でやっていること』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
佐藤智
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