星野リゾート代表が語る「高付加価値」の作り方、地域が稼ぐカギとなる「連泊」の取り組みも聞いてきた
地域活性化は、国内旅行の成長が不可欠
日本が観光で成長していくためには、幾多の課題がある。そのなかで、星野氏が懸念していることの1つが、20代の旅行参加率の減少だ。 星野氏は、「日本全体の観光消費額は約20数兆円。その8割以上が国内在住者による需要であり、インバウンドが国の目標に達成しても、観光消費額の半分を超えることはない。最大セグメントの日本人の国内旅行を、次の世代のことも考えて策を打っていくことが一番大切」と訴える。 若者が旅行しやすい環境を作るには、何が必要か。まず1つが、割引などを含め、若者を旅行に促す施策の拡充だ。星野氏は陸上の交通では、新幹線網が整備されることで並走する在来線が減少するなどの問題をあげ、「以前のように安い値段でゆっくりと国内を回る旅行がしにくくなった。高額な新幹線はビジネス向けではあるが、若者のレジャーには向かない面もある。これが、観光消費額で交通費の割合が高い理由でもある」と指摘する。 また、星野氏が長く訴える「休日分散化」も不可欠。これに関して、星野氏は「驚きの動き」と歓迎しているのが、愛知県が2023年から開始した「愛知ウィーク」や「ラーケーション」だ。「愛知ウィークは11月だが、これに他の都道府県も追随すると、日本全国の休みが分散する。これこそ、中央政府ではなく地方からできる日本の変革の1つになると思う」と期待を込める。 新型コロナによるパンデミックで「生き残り計画」を社内外に公表し、需要消滅の時期を凌ぎながらも攻めの戦略も展開してきた。「大変だったが、組織全体で乗り切ることができ、経営者としては良い学びを得た」という星野氏。「観光産業全体としても、学ぶことが多かったのではないか」と話す。右肩上がりに伸びていた国内旅行市場だが、2019年はインバウンドを含め、綻びも見えていた。「あのまま進めば問題が噴出していたはず。それを、コロナを契機に見直すことができた」と自信を見せる。 国内外67軒に拡大した星野リゾートは、今後3年間でさらに10軒以上の開業を控える。コロナを機に、海外では「再生型観光」の文脈で、観光関係者だけでなく地域住民とともに観光振興に参加する動きが加速している。星野氏は、こうした取り組みを同グループの施設を拠点に、「ステークホルダーツーリズム」として推進しようとしている。 聞き手:トラベルボイス編集長 山岡薫 記事:山田紀子
トラベルボイス編集部