星野リゾート代表が語る「高付加価値」の作り方、地域が稼ぐカギとなる「連泊」の取り組みも聞いてきた
地域に連泊して楽しめるシステムを
星野氏が、地域が稼ぐ根本的な方法と考えるのが、タビナカでの消費を増やすこと。宿泊施設への連泊を増やし、滞在時間を延ばすことで、地域に直接お金が落ちる時間を生み出すことだ。 しかし、現在は国内宿泊旅行の消費額の半分を交通費が占めている。これについて星野氏は「飛行機や新幹線など交通事業者や、旅をアレンジする旅行会社が観光から利益を得ても、地域に還元されるわけではない。日本の観光消費額から地域に落ちる金額を増やすには、連泊しかない。日本は諸外国に比べて圧倒的に1回の旅行あたりの宿泊日数が少ない」と、連泊の必要性を強調する。 同時に星野氏は「連泊しにくい理由には、私たちの方にも問題があるのではないか」と、宿泊事業者としての課題感にも触れた。その最たるものは、食事の提供スタイルだ。温泉旅館の宿泊は1泊2食付が基本になっているため、「重いフルコースの食事を、同じ雰囲気の中で連続して食べるのは、つらい経験になる」と感じているからだ。 では、連泊を増やしていくには何が必要か。星野氏はDXの観点で、星野リゾートで連泊を楽しめる仕組みを作る構想を明かした。 具体的には、星野リゾートの各宿泊施設の予約サイトで、連泊の宿泊予約をする時に、1泊目とは違った2泊目の食事アレンジを選び、予約できるようにすること。自社施設だけでなく、地域内の飲食店や体験事業者などからも選べるようにする。つまり、来訪者がタビマエで宿泊施設を軸にした地域での過ごし方をワンストップで予約できるサイトの構築だ。 例えば、星野リゾートの宿泊施設に3連泊する予定であれば、その予約のなかで、1泊目の夕食は館内で、2泊目の午前中は地域のアクティビティに参加し、夕食は地域の居酒屋で、3泊目は食事なし、という旅のプランが決められるというもの。ゆくゆくは、アクティビティや移動なども含め、タビナカ素材の予約もできるプラットフォームへの進化も視野に入れているという。 星野氏は「観光は地方において、今よりももっと重要な役割を果たせる。日本が観光立国を目指す理由も、地方経済への貢献を期待してのこと。私たちもそこを目指している」と、連泊推進に向けて宿泊施設が変革する意義を強調する。