ラーメン業界“閉店ラッシュ”の中で店舗を増やし続ける「丸源ラーメン」。圧倒的な成長を可能にした強みとは
ロードサイドを中心としながら駅前にも出店
丸源ラーメンの認知度を高め、物語コーポレーションはブランド力をさらに強化するために、新たなチャレンジとして、出店戦略を見直すようだ。従来の郊外ロードサイドを中心としながらも、駅前立地に積極的に出店する体制を構築する。 新規顧客開拓に力を入れると共に、人通りの多い場所に出店することで、ブランドの認知度を高め、ブランド全体への波及効果を期待する。これは将来的に立地の偏在性を解消し、立地で生じるリスクを分散させる狙いもありそうだ。2024年度株主総会で使用された決算資料によると、同社ではモデル店舗として、 店舗面積:約45坪 卓数:15卓58席 想定客単価:1000円 を掲げている。他店と比べるのは難しいが、一般的に賃料の高い駅前立地で、最適な採算性を考慮した規模だと思う。コンビニの1.5倍の大きさは、ラーメン客だけでなく、家族客や飲み客も誘致できるほど、カウンター席とテーブル席の適切なバランスを維持できる。固定費(家賃など)と変動費(効率的なオペレーション、利益最大化のメニュー構成から売上の増減で発生する費用)の適正化から、モデル店舗として設定したのだろう。
アプリのダウンロード数250万DLを突破
今後の労働力の減少も想定してDXを推進。注文はタッチパネルで、会計はセルフレジにする。あとは段階的に効率化に向けて、デジタル機器を活用しながらオペレーションの省力化・自動化を進めていくようだ。 同時にメニューアイテムの見直しも進め、煩雑な作業の改善や在庫管理の削減にも注力するようだ。 また、丸源アプリのダウンロード数が250万を突破したことを契機に、顧客の有効活用策を積極的に実施し、顧客の囲い込みに注力するようだ。顧客の来店効果が見込める付加価値の高い期間限定商品を現状の年5回から8回に増やして、来店頻度のさらなる向上を図るようである。
店舗数2桁成長を可能にした強みとは?
①価格と品質のバランスが取れた商品力 丸源ラーメンの看板商品である肉そば(税込759円)および、他の醤油ラーメン・味噌ラーメン・担担麺なども1000円以下でありながら、充実した内容と品質である。平日ランチであれば、人気の鉄板玉子チャーハンも追加料金220円(税込)でセットにできて合計1000円以下で食べられるといったお得感一杯である。 飽きやすく惚れやすい日本人特性の好奇心をくすぐった企画の提案で再来店を促している。その結果、お客さんの来店頻度も高く、顧客基盤は盤石で、売上の予測が立てやすく、売上管理も容易なようだ。 ②効率運営を重視した販売力 ラーメンチェーン店の多くは、セントラルキッチンで、食材を大量に仕入れしてコストダウンを図る。麺・餃子・チャーシューなどの大量生産によるスケールメリットも発揮して、品質向上とローコスト化に取り組み、規模の経済を実現している。チェーン企業として全体最適化を念頭に、積極的な多店舗展開とドミナント出店を実現している。セントラルキッチンの稼働率向上による原価率低下と現場調理の負担軽減に貢献している。そして、ドミナント出店により、物流コストの低減も実現できている。 また、丸源ラーメンの採算を推計すると、ランチ時の1人客が座るカウンター席の回転率は2.5回転であった。この店は料理提供も早く、20~25分間隔でお客さんが入れ替わる。粗利益も十分確保した価格設定になっており、これだけ効率的(粗利益×客席回転率)に入ると、経営は盤石だ。人員も機会損失を回避することを重視したシフト管理になっており、昼のピーク時はキッチン5人、ホール5人と万全な体制で溢れるお客さんを手際よく捌いている。