「冤罪だったと検察に認めて欲しい」38年前の福井女子中学生殺人事件で服役の前川彰司さん再審で無罪の公算大
1986年(昭和61年)に福井市で中学3年生の女子生徒が殺害された事件で、殺人罪が確定し7年間服役した前川彰司さん(59)の再審に向け、三者協議が行われた。検察側は新証拠を提出せず、実質争わない方針を示し、前川さんが無罪となる公算が高まった。
検察は新たな証拠を提出しない方針
12月11日、名古屋高等裁判所金沢支部に山田耕司裁判長と裁判官、弁護団11人、検察側3人が顔を合わせた。前川さんの再審に向けて三者で協議した結果、やり直しの裁判は2025年3月に開かれ、即日、結審することで合意した。 また、検察側は新たな証拠を提出しない方針を明らかにした。検察がこれ以上の新たな証拠を出さないと決めたことは、再審では事実上争わない姿勢を示したということになり、前川さんの無罪の可能性が高まった。
物的証拠が少ないまま逮捕
事件は1986年3月19日夜、福井市の市営住宅で起きた。当時中学3年生の女子生徒が顔や首など数十カ所を包丁で刺されて殺害された。 物的証拠が乏しい中、事件から約1年後、福井県警は複数の関係者の供述などから福井市の前川彰司さん(当時21)を逮捕。前川さんは一貫して無罪を主張し、1990年の福井地裁での1審では無罪となったが、2審名古屋高裁金沢支部が懲役7年の逆転有罪判決を言い渡し、7年間服役した。
「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」
前川さんは満期出所後の2004年に第一次再審請求をしたが認められず、2022年に二度目の請求をし、2024年10月に再審開始が決定した。決め手は、検察側が二度目の再審請求時に初めて開示した供述調書や捜査報告メモなどの証拠287点。その内容から当時のずさんな捜査が浮き彫りとなった。 名古屋高裁金沢支部は、有罪の根拠となった複数の供述を「捜査に行き詰まった捜査機関が関係者に不当な働きかけを行い、うその供述が形成された疑いが払しょくできず信用できない」と信用性を否定。「無罪を言い渡すべき明らかな証拠と言える」と言及したのだ。 三者協議後の会見で吉村悟弁護団長は「再審開始が確定した直後、前川君のお父さんが1日も早い無罪をと訴え、それをどう実現するかを考えてきた。(検察は)開示証拠は同意するとはっきり言ったので、これは大きな前進」とした。 前川彰司さんは「3月で結審ということになり、その時期については納得している。この事件は冤罪であったと検察に認めてもらいたい。証拠を隠していたことは事実なので、その責任を感じてもらいたい」と訴えた。 3月の再審までにあと2回の三者協議が開かれ、判決の言い渡しは2025年春頃となる見込み。
福井テレビ