「強盗だ!」は「Go to a door!」? 前代未聞、豪州男「空耳」裁判の行方 法廷から
「強盗だ!」ではなく、「Go to a door(ドアに向かえ)!」だったのか-。金品を奪おうと民家に忍び込み、住人にけがをさせたとして、住居侵入や強盗致傷罪に問われたオーストラリア国籍の男の公判が、東京地裁で開かれている。被害者に発したとされる「脅し文句」について、被告側は「英語を聞き間違えたものだ」として無罪を主張。〝空耳〟が争点となるのは極めて異例で、裁判員の判断が注目される。 【ひと目でわかる】「オットー・ダニエル・マシュー被告が言ったと主張する言葉」VS「被害者が聞いたと主張する言葉」 ■あの名物コーナー 「『空耳』をテーマにした番組を、知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか」 今月2日、弁護人が冒頭陳述でこう述べると、裁判員や裁判官の顔に、小さく笑みが浮かんだように見えた。 番組とは、テレビ朝日系列でかつて放送されていた深夜番組「タモリ倶楽部」の名物コーナー「空耳アワー」。洋楽の歌詞が、なぜかまったく別の意味の日本語に聞こえる-。そんなテーマで視聴者が投稿した曲を聴き、その妙を楽しむ趣向で根強い人気があった。 弁護人がわざわざ言及したのは、豪州国籍のオットー・ダニエル・マシュー被告(32)の行為が強盗だったのかどうか、カギを握るのは「空耳」だと主張しているからだ。 起訴状や検察側の冒頭陳述によると、事件は令和5年6月23日午後11時半ごろに発生。被告は東京都新宿区にある2階建て一軒家の2階ベランダに侵入し、住人の70代男性と鉢合わせてもみあいになり負傷させ、そのまま逃走したとされる。 ■「パルクールしながら帰宅中」 だが弁護側の冒頭陳述などによると、その夜の出来事はこうなる。 被告は近場で酒を飲んだ帰り道、建物の階段を上ったり壁を蹴って飛んだりするフランス発の都市型スポーツ「パルクール」をしながら、住宅街の建物と建物の間を抜けるように進んでいた。 男性宅の脇を通ったとき、「かすかにガソリンのような匂いがした」ため、火災の危険を住民に知らせようと思い、男性宅の2階によじ登った。ベランダには灯油のタンクがあった。 2階の室内から明かりが漏れ、テレビの音も聞こえたため、中に人がいると確信。火災の危険を伝えようと、ベランダに落ちていた小型スコップを手に、窓を開けようとしたり、手でたたいたりした。すると、不審に思った男性が、ベランダに出てきた。