<サッカー>U-21が韓国戦前に得た4つの収穫
4-0のスコアのまま、手元のストップウォッチのタイムが84分を過ぎたとき、日本のベンチが動いた。果敢にゴールに迫っていた野津田岳人に代えて、センターバックやボランチをこなす吉野恭平をピッチに送り出したのだ。 吉野が入ったのは、中盤のやや高めのポジション。その様子から「残り時間は少ないが、高い位置からプレッシャーを掛けて、気を引き締めていこう」という指揮官のメッセージが汲み取れた。それ自体はなんということもない交代だったが、実は大きな意味を持つ選手起用でもあった。吉野がピッチに立ったことで、日本は4試合目にして早くも20人の登録メンバー全員が出場機会を得ることになったのだ。 グループリーグの3試合を戦い終えたあと、手倉森誠監督は控え選手に対してこんな評価を下していた。「自分でサブと思っている選手はずっとサブになってしまうから、サブと思わないでやってくれ、という話をしている。いつ出番が来ても、今チームが取り組んでいることに対し、いつ出番が来ても俺には出来ると思っているかどうか。いつか俺を出せと思っているかどうか。その点に関して、全員からその覚悟が感じられる。みんながいいイメージで取り組んでくれているのを感じるね」。こうしたサブ組の取り組み方に対し、指揮官も選手起用で応えたわけだ。 短期決戦の国際トーナメントを勝ち抜くためには、チームの総合力が大きく問われる。チームとしていかにまとまれるか。その点で、こうした選手起用は、選手の士気を高め、チームがさらにまとまるきっかけになるはずだ。25日に行われたパレスチナとの決勝トーナメント1回戦。次に控える韓国との準々決勝に備え、隠しておいたほうがいいのではないかと思えるほど、日本は手の内を晒し、多くの成果を得た。 ひとつは、多彩な得点パターンだ。先制点はショートパスによるコンビネーションで中央から割って入り、最後は中盤の底から遠藤航が飛び出し、ゴールネットを揺らした。2点目はコーナーキックの流れから。一度は相手DFに防がれたものの、こぼれ球を拾って右からのクロスに、エースの鈴木武蔵が頭で決めた。3点目は相手の浅いDFラインを見逃さなかった遠藤がロングボールを放り込み、途中出場の荒野拓馬がゴール右隅にしっかりと決めた。4点目は再び中央から。中島翔哉がスルーパスを通し、野津田がGKと交錯してこぼれたところを原川力が押し込んだ。 練習の成果が随所に見られ、これだけ多彩なゴールが生まれたのだから、指揮官の表情が緩むのも無理はない。「きれいなゴールが決まると嬉しいね。いろんな得点の形を示すことができて、非常に満足している」。