<サッカー>U-21が韓国戦前に得た4つの収穫
ふたつ目の成果は、セットプレーからゴールが奪えたこと。2点目のコーナーキックの際、原川はゴール前に放り込むのではなく、グラウンダーのボールをマイナスに蹴り、ゴール前にいたはずの中島が回りこんでシュートを狙った。これはDFに当たってしまったが、いわゆるトリックプレーを試みたのだ。 試合前日、セットプレーの練習を入念に行なっていた。原川のマイナスのキックはそのパターンのひとつ。さらに言えば、このパレスチナ戦では右コーナーキックを原川、秋野央樹、野津田の3人が代わる代わる務めている。1試合で同サイドのキッカーがこうも変わるのは珍しい。こうしたセットプレーのバリエーションは、このチームに武器だと言える。 3つ目は、ゲームコントロールの部分。負ければ終わりの決勝トーナメント。それゆえ、様子を見ながら、ロングボールを多用してゲームを進めるプランもあったという。しかし前半、原川や中島のいる左サイドを中心にショートパスを繋いで押し込んでいったのは、パレスチナの力を見極めた上での選手たちの判断があった。原川が言う。「相手が思ったほどプレッシャーに来なかったので、ボールを持ったほうが相手も嫌だろうと。相手の嫌がることをしていこうという判断で、つないで崩していくことにしました」。それは、指揮官がコンセプトと掲げる「柔軟性」をチームとして身につけ始めた証でもあった 4つ目は、スムーズなシステム変更。日本はグループリーグの3試合で、スタートのシステムを3-4-3、4-3-3、4-2-3-1とすべて変えて戦ってきた。このパレスチア戦では4-3-3でスタートしたが、矢島慎也を投入して4-2-3-1に変え、吉野の投入とともに4-3-3に戻してゲームを終わらせた。ひと月前の福岡キャップの際に見られたバタバタした様子は微塵もなく、どうやら複数のシステムを自分たちのモノにしたように見える。 たしかにパレスチナは予想していたよりも歯ごたえのない相手だったが、それを差し引いても収穫は多く、大会を勝ち進むなかで、チームは成長していると言っていいだろう。 28日に行われる準々決勝の相手は宿敵の韓国になった。21歳以下で臨んでいる日本とは異なり、彼らは23歳以下のチーム。しかも、身長196センチを誇る大型FWのキム・シンウクや、鹿島アントラーズやジュビロ磐田で活躍し、今はドイツのマインツに所属するパク・チュホらオーバーエイジも加えた編成だ。 準々決勝のチケットは完売したと言われ、完全なるアウェーでの一戦だ。現時点での自分たちの力を測るうえで、格好の相手、これ以上にないシチュエーションだろう。試合を重ねるたびに成長してきたU-21日本代表だが、まだ見せてくれていないものがある。“勝負強さ”である。1年半後、オリンピックの出場権を勝ち取るために必要になる“勝負強さ”を、韓国との大一番で見せてもらいたい。 (文責・飯尾篤史/サッカーライター)