なぜ日本の学校はつまらなくなったのか…ある日突然、娘が不登校になった親が明かす「人格無視の実態」
「不登校」は過去最多
文部科学省は10月31日、2023年度の不登校の子どもの人数を発表した。「2023年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によれば、年間30日以上、小中学校に登校しなかった「長期欠席者」は49万3440人に上った。そのうち「不登校」は34万6482人(児童生徒全体の約3.7%)と過去最多で、11年連続での増加となった。 調査結果を詳しく見ると、小中学校の長期欠席者数は2022年度の46万648人から2023年度は49万3440人へと前年度よりも約3万3000人増えている。同様に不登校の人数は2022年度の29万9048人から2023年度は34万6482人へと約4万7000人の増加となっている。 小学生の不登校は13万370人で10年前と比べて5倍、中学生の不登校は21万6112人で10年間で2.2倍になっており、小学生の不登校が大幅に増加している。 今回発表された文科省の調査では、学校が把握している不登校になった理由のトップは「学校生活に対してやる気が出ない」(32.2%)、次に「不安・抑うつ」(23.1%)、「生活リズムの不調」(23%)となっている。 この「学校生活に対してやる気が出ない」のなかには、宏美さんの娘のように「右へ倣え」の一斉指導が影響しているケースもあるのではないか。一律・画一的な教育現場で少しの多様性や配慮が認められず、苦しむ子どもたちがいる。 さらに宏美さん親子を悩ませるのは、周囲の「中学受験熱」だ。首都圏で最大規模の中学受験向け公開模試を行う「首都圏模試センター」によれば、首都圏での2023年の私立・国立中学受験者数が過去最多の5万2600人で、受験率は過去最高の17.86%をつけた。宏美さんの娘が通う学校では約半数が中学受験をする予定で、受験しなくてもほとんどのクラスメイトが塾や習い事に通っている。 中学受験のために小学3~4年生から受験専門の塾に通う同級生は、既に6年生の分の勉強が終わっている。大量に出る塾の宿題は難解で、それを解くのに日々明け暮れるうち、「学校の宿題なんて簡単すぎてやる意味がない」「学校の授業なんてもう分かっている」と言って、児童らは学校の授業を軽視。保護者は学校に「塾で忙しいから宿題を出さないで」と注文をつけている。 塾の多くが毎月実施されるテストの成績順によってクラスが決まるため、教室での話題は塾の成績のことばかり。学年が上がるにつれ、子ども同士、親同士でマウントのとり合いが激しくなる。その雰囲気が、受験しないと決めている宏美さん親子にとっては辛い。受験勉強のストレスで教室は荒れ、教員が子どもたちを管理・統制するしかなくなる。だから、「右へ倣え」となっていく。 そして、そもそも教員は長時間労働によって疲弊している。人手不足で教員が精神的に追い込まれれば、一人ひとりを丁寧に見ることができず、子どもたちを従わせるようになることもある。教育の質の低下とともに指導がマニュアル化し、受験塾で機械的に答えていくことに慣れた子どもたちは、大人が望むことを子どもが答えるようになる。そうした教室が、学校が、楽しいと感じられるだろうか。 「学校がつまらない」「学校が嫌」――。そう言って不登校になるのは、子どもたちの精一杯の抵抗かもしれない。不登校の増加から、規格化・画一化された教育現場の実態に目を向けることが求められるのではないだろうか。
小林 美希(ジャーナリスト)