コロナ禍で悩んだ花の仕事 リケジョが農学部で学んだ命と自然
植物や生き物に関心があり、将来そのような仕事に携わってみたいと考える高校生は少なくないかもしれません。農学部に進学し、現在は花と緑の仕事の最前線で活躍する女性に、この分野の学びの面白さや、現在の仕事に至るまでの経緯を聞きました 【写真】大学時代の臼井さん。農家でたびたび実習を積んだ=提供
私たちを取り巻く自然やそこにすむ生き物たちに興味を持ったら、選択肢の一つになるのが、農学部への進学です。農学部では、動植物から環境までを理系だけではなく、人文社会学的な立場からもアプローチします。気候変動が激しくなりつつある現代では、食料や環境をどう守っていくかということは、人類共通の課題です。 2023年に学部創設100周年を迎えた京都大学農学部は、資源生物科学科、応用生命科学科、地域環境工学科、食料・環境経済学科、森林科学科、食品生物科学科の6学科で構成されています。また、明治大学農学部は、農学科、農芸化学科、生命科学科、食料環境政策学科の4学科で構成され、「自然科学系教員と社会人文科学系教員の協力のもと、文理融合型の教養教育と専門教育を実施する体制を整えている」としています。命に直結する問題を多角的に学ぶことができるという点で、目が離せない分野です。 花と緑を販売する第一園芸の環境緑化・空間装飾ブランド「OASEEDS」事業本部装飾営業部で働く臼井彩子さんも、幼い頃から、自分を取り巻く自然や動植物に興味を持っていました。そして、高校生の頃には、農学部への進学を決めていました。 「海岸沿いにある港町で生まれ育ったからでしょうか、日本の原風景として思い描く田園風景に、漠然とした憧れがありました。森に暮らす動物を包み込む樹木や、人間の手によって維持された田畑の美しさに惹かれ、農業について学びたいと思い、農学部に進めば自然や生き物に関わることができると考えました」 第1志望は東京農業大学。決めたのはオープンキャンパスでした。渡されたパンフレットに書かれた言葉「稲のことは稲に聞け、農業のことは農民に聞け」が、憧れの原風景とピタッと結びついたと臼井さんは言います。同大学の教育理念は「実学主義」。現場に通い、そこで働く人々の声に耳を傾け、浮かび上がってくる課題を解決する道を探っていく学びに興味を持ち、同大学の農学部農学科に進みました。 「高校の授業の中でも特に生物が好きで、この科目からつながっていく将来の仕事は、食品分野などの研究開発職か、農業なのかなと考えました。生物は好きだから自然と勉強に力が入ったし、数学は必死に学びました」