「北朝鮮の追加派兵を阻止」…バイデン大統領、ロシアへの長距離ミサイル攻撃を容認
「クルスク州の北朝鮮軍も標的になり得る」
ジョー・バイデン米大統領が、自国の供与した長距離ミサイルをウクライナ軍がロシア領土の攻撃に使用することを許可した。米当局者たちは、北朝鮮軍のロシア派兵に対応する措置として、米国が供与したミサイルが北朝鮮軍の打撃にも使われる見通しだと述べた。 ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど米国のマスコミは17日(現地時間)、バイデン大統領が強い破壊力を持つミサイル「ATACMS」をウクライナがロシア領土攻撃に使うことを容認したと報道した。米国がウクライナに供与したATACMSは射程距離が300キロメートルに達する。米国は当初、ロシア領土の攻撃に利用されロシアを過度に刺激する恐れがあるとの理由で、射程距離の短い旧型ATACMSのみ供与していたが、今年4月から新型ATACMSをウクライナに供与し始めた。ただし、同ミサイルをロシア領土への攻撃に使用することは引き続き禁止してきた。 米当局者たちは、今回の決定はロシア軍が北朝鮮兵1万人を含む5万の兵力でクルスク奪還戦に乗り出したことへの対応だと説明した。ロシアはウクライナ軍が8月に電撃的に占領した自国西側の領土クルスク州の一部地域を取り戻すため、大規模な作戦を始めており、米国は現地の北朝鮮軍も戦闘に加担していると最近明らかにした。 ニューヨーク・タイムズの報道によると、米当局者たちは北朝鮮軍もATACMSの標的になり得ると語った。ウクライナ軍のATACMSは、クルスク州に投入されたロシア軍および北朝鮮軍に対抗してウクライナ軍を防衛するのに優先的に使われるものと予想され、その後バイデン大統領が他の地域での使用も許可する見込みだと当局者たちは伝えた。 任期が2カ月しか残っていないバイデン大統領が重要な決定を下した背景には、北朝鮮軍の参戦が決定的な契機になったと、米当局者たちは説明した。米政府の中でもロシアを刺激して戦争拡大を誘発しかねないという声が依然として残っているが、バイデン大統領は北朝鮮に「代償」を払わせ、さらなる派兵を防ぐ必要性に重きを置いているという。米国側は北朝鮮軍が戦闘に加担すればウクライナ軍の「適法な標的」になると警告してきた。ウクライナ側では、北朝鮮軍の派兵規模が10万人まで増える可能性があるという見通しも示されている。バイデン大統領は前日、中国の習近平国家主席との首脳会談で、北朝鮮のさらなる派兵を阻止するため影響力を行使してほしいと要請した。自国が供与したミサイルを使ったロシア領土への攻撃を禁じてきた英国やフランスが、米国と同様の決定を下す可能性もある。 米国側はバイデン大統領の今回の決定が戦勢を変えることはできないとみている。しかし、北朝鮮軍のさらなる派兵を牽制するとともに、ウクライナ軍がクルスク州の一部地域を掌握し続け、終戦交渉に有利な状況を作ることが狙いという見方もある。ドナルド・トランプ次期米大統領は、「就任すれば24時間以内に戦争を終わらせる」としながらも、その方法は示していない。 J・D・バンス次期米副大統領は、ロシア軍が占領した領土をウクライナが譲歩することを条件として示したことがある。しかし、ウクライナ軍がクルスク州を占領し続けることができれば、ロシア軍に奪われた自国の東部や東南部の領土と交換する方式が可能になる。 バイデン大統領の決定は、軍事援助に懐疑的なトランプ次期大統領の政権獲得を控え、任期最後までウクライナを支援するという意志を明らかにしたものともいえる。 ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )