【“幻の”貿易統計集からロシア貿易を検証】制裁の影響は?中国・インド・トルコへ傾斜で生まれた痛手
1年ほど前に、「北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること」というコラムをお届けした。ウクライナ侵攻開始後、ロシア当局はネットでは貿易統計をほとんど表に出さなくなり、もうロシア貿易統計へのアクセスは永遠に閉ざされたのかと思われた。ところが、何のことはない、紙の貿易統計集はひっそりと出続けており、それを職場の図書室で見付けて驚愕したという話であった。 【図表】データで見るロシア貿易 前回のコラムでは、『ロシア連邦通関統計集』の2022年年報と、23年第1四半期報までが入荷したとお伝えした。それらが舞い込んだのが、23年8月半ば。今後は定期的に届くだろうと、期待して待っていたのだが、それから1年以上、四半期報を含め、まったく音沙汰がなかった。 これはさすがに、ロシア税関というおとぼけ機関も、クレムリンから厳重注意を受け、紙の統計集を出さないことにしたのだろうか? そう言えば、24年5月には税関の新局長にV.ピカリョフ氏が就任しており、もしかしたら人事異動で風向きが変わったのか? などなど、色々気を揉んだわけである。 そうしたところ、今年9月末になって、ようやく念願の入荷があった。23年年報に加え、四半期報も24年第1四半期分まで一気に届いた(写真参照)。ロシアの貿易パフォーマンスは、22年まではまだ欧州向けエネルギー輸出などもかなり残っており、制裁の影響を本格的に検証するためには、23年のデータがどうしても欠かせない。それを記録した23年年報を確保することができ、一安堵したわけである。 ただし、中身を精査したところ、22年年報までは従来とまったく同じ内容だったのに対し、23年年報では残念な後退があった。ロシアの経済安全保障上、機微な品目である原油(2709)、石油製品(2710)、金(7108)、白金(7110)、ダイヤモンド(7102)等の輸出量・額および相手国が、掲載されなくなってしまったのだ(本稿で商品名に付す番号は国際貿易に用いられる世界的な商品分類であるHSコード)。 というわけで、図1では、数字が得られる最後の年になってしまった22年の輸出額を用い、ロシアの主要商品の輸出額を比較している。もうこのグラフの更新は叶わない。