【ロシアへの危機感が生むフィンランドのイノベーション】”技術立国”支える教育や政府機関、日本が学ぶべきこととは?
日本がフィンランドから学ぶべきこと
ではフィンランドの実例から日本は何を学ぶべきなのか。「日本とフィンランドは非常に似ている」と指摘するのはデジタル・ディフェンス・エコシステムのヤルモ・ププッティ氏だ。同氏によると国民の勤勉さなど文化的にも類似点があるが、何よりも「どちらもロシアの隣国であり、さしたる資源もない中で、技術力やイノベーションによる立国を行っている」点で、両国には共通点が多い。 ただし日本のスタートアップ支援などが日本特有の均等ばら撒きに陥りやすいのに対し、フィンランドは事業内容を精査し、注ぎ込むべきところには惜しみない援助を行っている。例えば、Silo AI社が欧州最大のAIスタートアップ企業に成長し、24年に米AMDに買収されるなど、ユニコーン企業も誕生している。 日本では防衛分野の技術開発にアレルギーが根強く、近年では、同分野から撤退する企業が相次ぎ、日本の防衛産業は今、存亡の危機に瀕している。だが、多くの国で防衛技術として生まれたものがその後、民間利用され大きな成果を収めているものも少なくない。その逆もしかりだ。産業分野で活用されるドローンや全地球測位システム (GPS)、宇宙ロケットと弾道ミサイルなど、様々な技術が我々の生活を支え、安全保障面でも活用されており、それらは表裏一体ともいえる。 国民にとって利益となる産業の育成、必要であれば大企業を切り捨ててでもイノベーションを支援する姿勢など、学ぶべき点は多い。
土方細秩子