「青木宣親選手の思い出」6年4組3番、山本萩子【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第132回
復帰した後の目標は日本一。MLB帰りの青木選手は、久しぶりの日本球界でも躍動しましたが、今も私の脳裏に鮮明に残っているのは、目の前で見たランニングホームランです。 メットライフドームで行なわれた西武戦。打球はセンターに上がり、その瞬間はファンも、青木さん本人も「凡打だ」と肩を落としたはず。それが、西武の選手が打球を見失ったことで、まさかの世にも珍しい先頭打者ランニングホームランになりました。青木選手がホームインする瞬間が大好きなので、それを久々に見られたのも嬉しかったなぁ。 日本に帰ってきてからは、自分のことだけでなく、後輩の選手たちにも目をかけているのを感じました。自主トレを積極的に行ない、後輩たちにトレーニングの重要性を伝え、チーム力の底上げに寄与しました。 青木選手の薫陶を受けた選手たちの意識が劇的に変化したのは、ファンの目にもわかるほどです。村上宗隆選手の三冠王、山田哲人選手が発揮するキャプテンシーなどは、"青木イズム"を継承した影響も大きいでしょう。 2021年にはリーグ優勝を果たしますが、その優勝が決まる直前にフライングでベンチを飛び出してしまいました(笑)。その後、日本一にもなって先輩の石川雅規投手に肩を抱かれながら泣いていた青木選手。「このふたりがいるうちに日本一になれてよかったよね」と、母とふたり、泣きながら手を取り合ったのを覚えてます。 野球選手に引退はつきものですが、青木選手が引退を表明した日は何も手につきませんでした。私だけでなく、ヤクルトファンにとってそれほど大きな存在でした。 選手が引退する際、アメリカでは「おめでとう」と言います。「あなたの新しい人生の始まりに祝福を」という意味があるそうです。素敵な慣習だと思いますが......それでも言わせてください。青木選手、寂しいです。何度もバッティングセンターで真似をしたあのフォームが見れなくなること、チームを鼓舞する姿が見れなくなることが寂しいです。 まだシーズンは残っていますが、本当にお疲れさまでした。たくさんの思い出をありがとうございました。 いつかまた指導者としてチームに帰ってくるその日まで、ゆっくり体を休めてください。 構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作