福井県三國湊で開業した「町まるごとオーベルジュ」、NTT西日本らが推進する地方創生、その取り組みを取材した
息の長い地方創生事業として
Actibaseふくいの設立から1年で、「オーベルジュほまち三國湊」が開業した。ただ、樋口氏は「ビジネスとしてはそんなに簡単な話ではない」と話す。ホテル1棟を建てるのであれば、何百室と提供できるが、一棟貸しでは10棟でも宿泊客は十数人。宿泊事業として投資回収期間を考えると、黒字化には時間がかかる。さらに、古い町家の改修は、新築よりもコストがかかるという。 また、空き町家を改修した宿泊施設は全国にあり、集客のためにはその差別化も必要になってくる。 「古い街並みが残る三國湊の歴史と文化をアピールしていくことをパッケージとして、『オーベルジュほまち三國湊』を売っていき、地域活性化の好循環を生んでいくことが大切な要素」と樋口氏。宿泊事業の枠にとどめず、息の長い地方創生事業として捉えている。 Actibaseふくいでは今後、持続可能な観光地経営に向けて、タビマエからタビナカ、タビアトまでICTを活用したサービスを提供していく計画も立てている。NTT西日本の関連会社NTTビジネスソリューションズが開発した「観光流通プラットフォーム」の活用を視野に入れるほか、旅行者向けのアプリの開発やXR技術を活用した観光案内などのアイデアも持つ。 樋口氏は「三國湊を実証フィールドとしていきたい」と話し、将来的には他の地域への横展開にも期待を寄せた。 北陸新幹線延伸や中部縦貫自動車道の整備は、坂井市も含め福井県では「100年に1度の好機」と位置付けられている。八杉氏は「地域住民、人を呼び込むビジネスに関係するあらゆる事業者がスクラムを組むことが大事」と話す。また、樋口氏は「地元が一体であることが、観光客に喜んでもらえることにつながる」と続けた。 北前船交易のハブだった三國湊。ここから越前の人や物が出入りし、豊かな文化がつくられていった。「オーベルジュほまち三國湊」は、その三國湊に新たな風を吹き込む。 聞き手:トラベルボイス編集長 山岡薫 記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹 取材協力:福井県
トラベルボイス編集部