京成電鉄が「オリエンタルランド株」を巡ってファンドと攻防 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さを発揮
「京成電鉄は強い。ファンドの要求に応じているようでいて、実はまともに対峙していないように見える」。大手私鉄のある幹部はそう語る。 【写真】京成電鉄の本社は千葉県市川市にある 千葉、東京東部などを地盤とする京成電鉄とアクティビスト(物言う株主)の対立がヒートアップしている。イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求していた。
当初は勧告的な内容にとどめていたが、京成電鉄側が拒否したため、法的拘束力のある株主提案として再提出した。 ■パリサーとは10回以上の会談 パリサー側の資料によると、京成電鉄の取締役会とは2021年8月に協議を開始している。このころに京成電鉄株を取得したと推察される。 これまで両者は10回以上にわたりオンラインや対面でミーティングを実施してきた。OLC株の売却などを要請するパリサーに対し、京成電鉄側は「OLC株の売却は当面ない」などと対立の姿勢を見せていた。
だが、2024年2月に330億円を上限とする自己株買いを発表。さらに3月には約1640万株のOLC株式を801億円で譲渡し、保有比率を約19%と1%ポイント引き下げた。売却益は特別配当として、株主に一部還元した。 譲歩の姿勢を見せたように映る京成電鉄だが、パリサー側は対応に不満を募らせる。「OLC株1%の売却自体は歓迎。大きな一歩。だが、成長戦略や株主還元の意識は到底足りない」と、京成電鉄の内情に詳しい市場関係者は指摘する。
株価もこの市場関係者の不満を反映しているかのようだ。OLC株1%売却と増配の発表を受けた4月30日、京成電鉄の株価(終値)は5893円と前営業日終値比で0.6%下落した。株式市場の反応は冷ややかだった。 「これが株式市場の評価だ。しぶしぶ、1%を売ったことが市場に見透かされている。これでは(この程度の規模の売却では)ダメでしょう、というのが投資家の大半の見方ではないか」(別の市場関係者) 京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた。