所得税・住民税の定額減税「1人当たり4万円、約9000万人対象に」岸田首相会見11月2日(全文)※冒頭発言のみ
岸田文雄首相は2日、記者会見を行った。 ※岸田首相の冒頭発言のみ書き起こしています。 【動画】 岸田首相が会見 総合経済対策を閣議決定へ(2023年11月2日) ◇ ◇
デフレ完全脱却のための総合経済対策
岸田:先週の所信表明演説では、「経済、経済、経済」と強調し、この政権は何よりも物価高対策、そして経済対策を重視しているとの決意を申し上げました。その決意をデフレ完全脱却のための総合経済対策として、政府与党で本日決定をいたしました。 まず、今回の経済対策の考え方です。バブル崩壊後の30年間、我が国はデフレに悩まされてきました。日本企業、特に大企業は短期的な業績改善を優先して値下げをし、そして利益を確保するためにコストカットを進めてきました。あえて単純化すれば、賃金、投資を抑え、下請け企業に負担を寄せてきました。 総理に就任した際、私が新しい資本主義を掲げたのは、この縮小均衡のコストカット型経済の悪循環を一掃しなければ、日本経済が再び成長することはできないと考えたからです。この2年間、経済界に賃上げや設備投資、研究開発投資を強力に働きかけてきました。また、価格転嫁の推進など下請け企業の取引改善に全力で取り組んで来ました。
好循環はまだ完成していない
この結果、30年ぶりとなる春闘における大幅な水準の賃上げ、過去最大の民間投資、30年ぶりの株価水準、50兆円のデフレギャップ解消が実現し、今年、4~6月期のGDPは名目、実質とも過去最高となりました。 しかしながら、まだまだ道半ばです。賃金が上がり、家計の購買力が上がることで消費が増え、その結果、物の値段が適度に上がる。それが企業の売り上げ、業績に繋がり新たな投資を呼び込み、企業が次の成長段階に入る。その結果、また賃金が上がる。そうした好循環はまだ完成していません。 鍵を握るのは、賃上げと投資です。足元における最大の課題は、賃上げが物価上昇に追いついていないということです。この背景には、余裕のある一部の大企業は賃上げができても、多くの中小・零細企業ではまだまだ賃上げをする余裕がない、という事情があります。デフレから完全に脱却し、賃上げや投資が伸びる拡大好循環を実現するためには一定の経過期間が必要です。 そこで、今回の経済対策では2段階の施策を用意いたしました。第1段階の施策は、年内から年明けに直ちに取り組む緊急的な生活支援対策です。具体的には、生活に苦しんでいる世帯に対し、既に取り組んでいる1世帯3万円に加え、1世帯7万円をできる限り迅速に追加支給することで、1世帯当たり10万円を給付を行います。このことにより生活を支えてまいります。 第2段階の施策は、来春から来夏にかけて取り組む本格的な所得向上対策です。まず、来年の春闘に向けて、経済界に対して、私が先頭に立って今年を上回る水準の賃上げを働きかけます。同時に、労働者の7割は中小企業で働いています。このため、年末の税制改正で赤字法人が多い中小企業や医療法人なども活用できるよう、賃上げ税制を拡充するとともに、価格転嫁対策の強化など取引適正化をより一層進めるなどにより、中小企業の賃上げを全力で応援します。 このように、政府として全力で賃上げを進める環境を整備する予定ですが、それでもなお、来年に国民の賃金が物価を超えて伸びていく状況となるのは確実ではありません。しかし、今回のチャンスを逃せばデフレ脱却が難しくなります。確実に可処分所得を伸ばし、消費拡大に繋げ、好循環を実現する。そのため私は、来年の6月のボーナスのタイミングで、本人・扶養家族を問わず1人当たり計4万円、約9000万人を対象に総計3兆円半ばの規模で所得税・住民税の定額減税を行いたいと考えています。本人・扶養家族を問わずお1人ずつ減税を行うことで、過去に例のない子育て支援型の減税ともなります。