資金調達で「コミュニティ」をつくる 株式投資型クラファンで広げる可能性とは
非上場のスタートアップでも個人投資家から、資金調達ができる「株式投資型クラウドファンディング(以下、株式投資型クラファン)」が、日本でも認知度が高まってきた。なかでも、米国などで広がる「コミュニティラウンド」という手法で、日本では先駆けとなる事例も生まれている。個人投資家だけでなく、サービスのユーザー層からも資金調達を行い、さらに関係性を深める方法だ。 多拠点生活のコミュニティサービス「ADDress」では、2023年8月に初めて株式投資型クラファンサービス「イークラウド」で、3日間で上限募集額に達し、当時国内最高額の9930万円を調達し、約500人の株主を迎えた。9月28日には、同サービスで第2弾の募集を開始する。 株式投資型クラファンを巡っては、調達額上限を現状の年1億円未満から5億円未満に引き上げるなどの法改正を控えており、今後より新しい資金調達の手法として広まる可能性がある。ADDress代表取締役社長の佐別当隆志とイークラウド代表取締役社長の波多江直彦の対談をお届けしよう。 ──まずはお二人の出会いと、佐別当さんが「株式投資型クラファン」を活用しようと思った理由や決め手を教えてください。 波多江:2016年に佐別当さんたちがシェアリングエコノミー協会を立ち上げた際に、自分が在籍していたベンチャーキャピタルで関わりがあり、そこでご挨拶をしたのが出会いだったと記憶しています。 18年に多拠点生活プラットフォーム「ADDress」を発表され、事業成長を少し遠目に見てましたが、イークラウドの株式投資型クラウドファンディングと相性が良いと思っていたので、22年に久しぶりに連絡しました。ただすぐに実施をお願いしたいというよりは、株式投資型が比較的新しい仕組みなので、どうやってすると良いのか議論しつつ、昨年9月に最初の実施に至りました。 佐別当:僕は創業する時にみんなの力を合わせてサービスを作っていく「クラファンやSNSのような会社」にしたいなと思っていました。創業1年目から、佐々木俊尚さんや遠山正道さんなどエンジェル投資家20人ぐらいを集めて、しかも上限50万と決めて少額出資を募ったんです。リードでVCから出資を受けていたりもしていましたし、個人の方に調達を頼るよりは、応援が欲しかったという意図があります。 自分が中心となったリーダーシップを持つタイプの経営者でもないので、みんなと共に成長していくサービスにしていきたいなと思ってたんですね。 その後、物件の調達からユーザー獲得の段階も、初年度に3回(一般向けの)クラファンをやっていて、クラファンと共に1年目はスタートしたと言っても過言ではありません。最初から何百人、何千人もの人たちに関わっていただいたから、創業初期は皆さんの発信力に支えられ、認知度も高まっていったと思います。 波多江さんがイークラウドを立ち上げたのは知っていましたが、22年にお話をいただいた当初は社内のVCや既存の株主からまだ理解が得られず、リスクへの懸念が多かったように思います。 波多江:株主は限られた人たちでベンチャーを育てて、上場時に初めて個人が投資できるようになるという流れが、 上場会社を作る上でのひとつの商慣習というか、ベンチャーキャピタルが作ってきた形ではこうあったので、そこに対して、非上場段階から多くの方々に入ってもらうってとこに対しては、属性のリスクなどがあるんじゃないかと一般的には言われやすいです。 イークラウドでは、リスクに対していろんな解決策をアップしてきており、少しずつではありますが、そういった点への理解が進んできているように思います。