yommインタビュー 韓国から日本へ、赤い風船と再出発の旅
韓国のインディーシーンで人気を博してきたシンガーソングライターにして、モデルとしての顔も併せ持つチェ・ジョンユンが、日本語で歌う新プロジェクト「yomm」を始動。元yonawoの荒谷翔大、ミツメの川辺素、キセルの辻村豪文、YeYe、Jin Onoという気鋭の作家陣が参加したデビューEP『スクランブル - 東京』をリリースした。J-POPの繊細さと東京タワーに恋した彼女が、さまざまな葛藤を経て、日本で音楽活動をリスタートしようと決心した理由とは? 【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高の500曲」
運命みたいな日本の音楽との出会い
─まずは幼少期の頃のお話から聞かせてください。 yomm:幼い頃からずっと音楽は身近な存在でしたね。お母さんとお父さんが芸術に関心があったので、ピアノとか4、5種類の楽器を演奏していました。あとは、いろんな本を読んできたことも曲を書くうえで役立っている気がします。昔から小説が大好きで、最近は村上春樹さんをずっと読んでます。『女のいない男たち』は最高だったし、今読んでいる『色彩のない多崎つくると、彼の巡礼の年』もおもしろくて周りにも薦めています。 ─シンガーソングライターになろうと思ったきっかけは? yomm:元々はフルートを専攻していたんですけど、ある時期からポップスをやりたくなって。最初の頃は自分で歌うつもりはなく、作曲を学ぶためにバークリー音大に進学したんですが、作った曲を聞かせるために歌っていたら、友人たちから「自分で歌ったほうがいいよ」って何度も言われたんです。それがきっかけですね。 ─2017年から音楽活動を始めたそうですが、チェ・ジョンユンとして過去に発表してきた曲を聴くと、曲調はポップで心弾む一方、歌詞は赤裸々で内省的なものが多い気がします。どんな曲を作ろうと意識してきたのでしょう? yomm:いつもできるだけ正直な音楽を作ろうと意識しています。曲によっては子供っぽく思われたり、オフェンシブに聞こえる部分もあるかもしれないけど、そういうところも含めて私なので、変に飾ったりする必要はないかなって。ありのままの心の声を音楽に落とし込もうとしています。 ─日本のポップミュージックに強く興味をもつようになったきっかけは? yomm:昔からJ-POPの存在は知ってたしシティポップも聴いていましたが、大きかったのは数年前、周りの音楽仲間にキリンジ(KIRINJI)をお薦めされたこと。私はコード進行を重要視するタイプで、キリンジの曲はすごく洗練されているし、歌詞の作法も韓国のアーティストとは違う。「耳をうずめて」と「愛のcoda」がお気に入りで、「I ♡ 歌舞伎町」が入ってる最新作の『Steppin’ Out』もいいですよね。 TENDREさんも大好きです。日本に留学していた友達が教えてくれました。同じくコードが素晴らしいし、ジャジーな要素もあって歌やメロディも綺麗で。そこからLUCKY TAPESにもハマり、いろいろ聴くようになりました。星野源さん、TOMOOさん、Official髭男dism……本当にたくさん(笑)。 ─すでに韓国でキャリアを築いてきたyommさんが、日本で活動しようと決心したのはどういう経緯があったのでしょう? yomm:実は去年、この先も音楽を続けるべきなのかと、自分の将来について悩んでいたんです。そんなときに、TENDREさんが韓国でライブをするということでご招待いただき、そこから(TENDREやLUCKY TAPESが所属する)RALLYE LABELのオーナー・近越文紀さんと知り合うことができたので「大好きなレーベルです」とお伝えしたら、「一緒に何か作りませんか?」と言っていただいて。自分でもありえない展開だと思うし、運命すら感じています。それで、日本をメインに活動するからには日本語で歌おうと。