【連載企画・酒屋と飲食店のおいしい関係】vol.2 『米と肴 みなかわ』で「喜久醉 特別本醸造」を飲み語らう
温度による味わいの変化
「喜久醉 特別本醸造」は温度によっても表情を変えます。「40度くらいの、火照った感じがちょうどいい」と佐藤さん。
伝統を守り、進化を続ける「青島酒造」
「お米の洗い方で味が決まると言っていました。吸水時間、触った感じでの糠の取れ方で判断するので、洗米機は使わずに必ず手作業で行うそうです。そうすると、発酵する時の泡の色と音が違うとも言っていました。言ってしまうと、安いお酒ですよ。“安いお酒こそ丁寧に造る”というこだわりがあるからこそ、僕たちはこの綺麗なお酒を安心して飲めるんですね」と佐藤さんが語りはじめます。 佐藤さん:青島酒造の今の杜氏、青島孝さんは一度家を出て、ニューヨークで金融の仕事をバリバリしていた方なんです。酒造りに戻るきっかけとなったのが、アメリカでの膨大な仕事、素早く過ぎていく時間の中にいると、日本人として大事なことを見失っているように感じたそうです。一度離れた家業の酒造りも日本文化。そこに立ち戻ることで改めて日本の風土、文化を見つめていきたいと(今では蔵元としての経営、杜氏、米作りの三刀流)。季節の話をすると、日本酒は折々で味の変化を楽しめる飲みものですが、青島酒造では季節酒としての販売はしません。新酒を搾った時期の味、貯蔵した秋あがりの味。青島さんにとっての季節酒はそのくらいのものです。それってもう、単なる季節の移ろいですよね。 皆川さん:そこらへんにもストイックさを感じますよね。格好いい! 佐藤さん:ベースの味わいも変えないような酒造りもされています。米の出来や気候変動など、酒造りに影響を及ぼすことって毎年変わって起こりうるはずですが、それでも味わいを変えないために自分たち周りが変わっていく必要性を常に大事にされています。酒造期の青島さんの生活ぶり、酒造りに照準を合わせた酒造期以外の徹底した自己管理の話を聞くと、まさに酒造りに人生を捧げた人なんですけど…。それでいて飲むとこんなにしとやかなお酒なんですから、ストイックさを感じさせない驚きがありますよ。本人は「それが何?」とケラケラされていましたが(笑) 皆川さん:そういう話を聞くと、ちゃんと売らなきゃ、美味しい料理を出さなきゃって思いますよね。作り手の想いを踏みにじってはいけない。 佐藤さん:喜久醉の味わいを表現するためには、美しい日本語を当てはめたくなります。皆川さんも僕も、和食や日本酒と関わってしまったばっかりに、日本文化の継承を課せられているわけで(笑)。『米と肴 みなかわ』でお客さんが楽しそうに日本酒を飲んでいる姿を見ると嬉しくなります。文化を守ってくれている、繋いでくれているって。