引退する「ドクターイエロー」。座席数、ねぐら、後継車両…実はあまり知られていない7つの秘密
新幹線のお医者さん「新幹線電気軌道総合試験車」(通称「ドクターイエロー」)が引退する。東海道・山陽新幹線では2編成のドクターイエローが走行しているが、車両の老朽化に伴い、JR東海のT4編成が2025年1月をもって、JR西日本のT5編成も2027年度以降を目途に引退することが発表された。 【画像】“ねぐら”で休むドクターイエロー。T4、T5編成が並んだ姿を見られるかも? ドクターイエローは7両編成なので、それにちなんで7つのトピックを取り上げてみたい。
◆1. ドクターイエローの正式名称は?
ドクターイエローの正式名称は新幹線電気軌道総合試験車、形式は923形。JR東海所属の0番代(T4編成)およびJR西日本所属の3000番代(T5編成)の2本がある。今回引退を表明したのはT4編成である。 線路や架線などの施設を点検するところから「新幹線のお医者さん」と言われ、車体が黄色であるため「ドクターイエロー」という愛称で親しまれている。「いつから呼ばれるようになったか、また、名付け親についても不明だ」(JR東海広報の話)。
◆2. ドクターイエローの編成は?
ドクターイエローは7両編成。東海道新幹線を走る「のぞみ」「ひかり」「こだま」は全て16両編成なので、きわめて短編成だ。東京駅に停車していると、長いホームの後ろ半分にちょこんと停まっている感じだ。旅客用車両ではないので、窓の配置が特殊である。 1~3号車は電気測定関係、4号車は軌道測定関係、5号車は休憩室と観測ドーム、6号車にはミーティングルームや緊急時に復旧資材を載せるスペースがある。7号車には添乗員室(50人分の座席)があり、視察などで乗車するときに使われる。
◆3. ドクターイエローのねぐらは?
ドクターイエローは、普段は大井車両基地(東京都品川区)で休んでいる。T5編成の所属はJR西日本であるが、T4編成と同じく大井車両基地に常駐しているので、うまくすれば2編成ともに姿を見ることができるかもしれない。 東京モノレールの大井競馬場前駅から東に歩いて10数分。陸橋の上から車両基地の一部を眺めることができる。
◆4. ドクターイエローの後継車は?
老朽化により引退するドクターイエローの後継車はどうなるのか? T4編成引退後はT5編成のみで検測を行う。T4編成が引退するまでの間にT5編成の必要な検査などを十分に行うとともに、T4編成の機器を予備品として確保するなど備えを万全に行うことで、現在の検査頻度を維持することができるという(JR東海の話)。 T5引退後、追加投入するN700Sの一部編成に、かねてより技術開発を行っていた地上設備の検測装置を搭載することにより、ドクターイエローによる検査を代替する。2027年以降はわざわざドクターイエローのような特別な列車を走らせるのではなく、営業列車による検査となる。 また、新たな検測機能として、電車線設備の画像を解析して設備の異常を検知する機能や画像および点群データから軌道材料の状態を詳細に把握できる軌道材料モニタリング機能などを搭載する。これらにより、営業車両でドクターイエローと同等以上のデータを高頻度で取得可能となり、設備の安全性・信頼性が向上する。