【今日発売】BYDシールに国内最速試乗 AWDで537ps・航続およそ600kmにして実質537万円の戦略価格
AWDはオーバースペック気味?
アップダウンの激しい峠道では、モーター駆動特有のトルクフルで力強い加速を体感した。 AWDでは前217ps・後312psのモーターを搭載、最大トルク670Nm、0-100km/h加速は3.8秒としている。ただ、峠道やスカイラインでの爽快さを重視するならば、個人的には出力308 hpのRWDで十分であると感じた。 「踏める楽しさ・操る楽しさ」においてはRWDの方が扱いやすく、AWDは単純にオーバースペック。もちろん、可変ダンピングアブソーバや、加速時のスリップを検知して制御する「iTAC」などAWDにしかない目玉技術はあるが、デイリーユースならRWDでまったく問題ない。 試乗する前は「買うならAWD一択」と思っていたので、この辺りは実際に試乗して得た印象だ。ただ、消費者によってクルマに求める性能は異なるはずなので、購入を検討する際はAWDとRWDの両方に試乗するのが良いだろう。 シールは「刀」形状のバッテリーセルで構成された「ブレードバッテリー」を搭載しており、日本モデルでは容量82.5kWhとなる。航続距離はWLTCモードでそれぞれ640kmと575kmと公表しており、カタログ上の数値としては中国独自のCLTCモード値の9掛けほどになる。 このバッテリーと「e-Platform 3.0」上で設計されたボディは、BEVにしてはかなり低いフロアを実現した。それに起因する重心の低さもコントロール性に寄与している。
低いフロアのおかげで室内はとにかく広い!
一方でドライビングポジションは調整してもアイポイントが高めなゆえ、人によっては酔いやすさと感じてしまうかもしれない。また、シートは高級感を演出するレザーだが、凹凸面が少ないためにホールド性にやや欠ける印象を受けた。 低いフロアは室内の広さにも直結する。事実、シールの車内はとても広々としており、後部座席の床面もフラットだ。音響システムには1977年にデンマークで創業した高級オーディオメーカー「Dynaudio(ディナウディオ)」製12スピーカーシステムを標準採用しており、音響性能は非常に素晴らしい。 その一方、車体に使われている吸音材が少ないのか?車外の音やロードノイズは若干だが室内に伝わり、また車内の音楽も外に漏れやすいと感じた。 アザラシ(seal)から着想を得た、可愛らしくも洗練されたボディデザインは唯一無二のオリジナリティにあふれている。 ほかのBYD乗用車同様、金型は群馬県館林市にある「TATEBAYASHI MOULDING」にて設計されている。これは2010年4月に世界最大手の金型メーカー、オギハラの館林工場をBYDが買収した施設であり、クルマとしての完成度は非常に高い。 一方で日本におけるセダン需要はSUVほど高くなく、ガソリン車のDセグメントセダンも相手に戦わないといけないシールの今後がとても興味深い。
加藤博人(執筆/撮影)