国立決戦で苦戦、選手も吐露「苦しかった」 “横綱相撲”ではないJ王者…V奪取成功の要因【コラム】
迫力あるフィニッシュで決勝点、神戸が持つ大きな強み
結果的に宮代がこぼれ球を押し込む形となったが、前川のロングキックに潰れる形でボールをつないだ佐々木も体勢をすぐに立て直して、宮代のすぐ外側に入ってきていた。吉田孝行監督も「前半から自分たちのサッカーはそこまで出せなかったですけど、我慢強くやろうと。しぶとく、自分たちらしく勝負できた」と振り返る厳しい試合展開で、1つ違ったらG大阪側に勝利の女神が微笑む可能性も十分にあった。しかし、自分たちの流れにならない時間帯も耐えながら、ここぞという時に矢印をゴールに向けて、迫力あるフィニッシュを実現できるのが、神戸の大きな強みの1つだ。 「いやもう本当、我慢する戦いでした。ガンバも非常に良いサッカーして、非常に前半は苦しみましたけど、そこで焦れずに戦えたっていうのは良かったかなと思います。ゼロに抑えてれば、必ず自分たちのチャンスもきますし、そういうところで一発仕留められるか。そこで今年は勝ち点を積み重ねてきた」 天皇杯のファイナルという大舞台でヒーローになった宮代は相手の強さを認めながら、接戦をものにする神戸の強さをそう表現した。その宮代もJリーグ連覇という大目標が残されていることを認識しており、まだシーズンが終わっていないことを強調していたが、G大阪という好敵手を相手に1つ、神戸の強さを証明する形で、天皇杯のタイトルを勝ち獲った。 [著者プロフィール] 河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。
河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji