「アメリカ映画の定義を変えることができたと思う」映画『パスト ライブス/再会』主演のグレタ・リーが語る、ハリウッドの現在とは?
――ノラは自分の夢が幼い頃から明確で、恋に揺れても、恋のためにキャリア設計を諦めたり、変えたりしません。こういうヒロインはなかなか日本映画では見ることができなかったので、感激しました。 日本映画では彼女のようなヒロインは少ないと言われたけど、それはアメリカ映画でも一緒。ノラのように求めているものが明確で、強い女性を映画の中で描くのは、まだまだ躊躇されています。男性の場合は、映画の中でこの人物は何歳までに何を達成したいのか、目標がきちんと設定されることが多いけど、多くの女性のキャラクターはそうじゃない。だからこそ、ノラを演じるのがすごく楽しみでした。私にとっても、他の女性たちにとっても、ノラが現実の女性像だとわかっていたから。彼女には、愛がある故の脆さや優しさもあり、それに伴う不安の感情も表現できる。これらの要素は、この映画にぴったりだと思いました。
――ノラとヘソンは24歳の時はまだ仕事のキャリアが駆け出しで、長距離を飛び越え、会いに行くことができません。でも36歳の時は、ヘソンが韓国からニューヨークへとやってきます。24年ぶりに再会したヘソンについて、ノラは「too much Korean=韓国っぽすぎる」 というような表現をしていました。それはヘソンが幼い頃から韓国の激しい競争社会を果敢に生き抜こうとしている男性であることを示し、ノラはそのことを否定せず、故郷の懐かしい存在としてリスペクトする。あなた自身は、ややマチズモな社会を生き抜くため、初恋の少女の残像を心の支えとするヘソンをどう感じますか? また、ヘソンを演じたユ・テオさんの人間性が表れ出ていると感じた場面があれば教えてください。 テオは韓国にルーツはあるけど、ドイツの移民で、私はいつも彼をとてもドイツ人的だとからかうの(笑)。彼がヘソン役にぴったりな理由のひとつに、彼がドイツで生まれ育ち、ドイツ文化独特のメランコリックな要素を持っているところ。私はヘソンという人物にすごく共感できる。男性優位な社会で育ち、成功しなければいけないというプレッシャーの中で生きている。それは現代女性が直面する現実とも似ていると思う。そんな共通点があるのは正直驚きでした。人生を歩む中で、時に方向性を見失い、「なぜ自分はいまここにいるのか」と自問することってあるでしょう。自分にとって何が大切なのかってね。役者としてテオと話し合った経験は、ノラとヘソンの関係性を描く上で非常に役立ったわ。