「アメリカ映画の定義を変えることができたと思う」映画『パスト ライブス/再会』主演のグレタ・リーが語る、ハリウッドの現在とは?
――コロナ禍で中断されてしまいましたが、2021年に、A24の製作でキャシー・パーク・ホンの自伝的エッセイ集をテレビ映画化した『Minor Feelings』で脚本、製作総指揮、主演を務める予定だったと聞いています。この本は、アメリカ社会で見えない存在として扱われがちなアジア系移民の憂鬱について描かれたものです。以前から、ご自身のプロデュースで数々の企画を立てられていますが、その中のひとつとして、1950年から60年代のアメリカの音楽シーンで成功を収めた韓国生まれのアメリカ人女性ヴォーカルグループで、3人姉妹のユニットであるキム・シスターズの映画化をいつか実現したいと思っているという発言をあるインタビューで読みました。彼女たちの企画に惹かれる理由を教えてください。 私は苦難を克服した人の物語に惹かれるんだと思う。キム・シスターズはK-POPグループのはしりだと言えるわ。幼い頃は彼女たちの存在を知らなかったけど、最近になって、1960年代の「エド・サリヴァン・ショー」など有名なテレビ番組で、彼女たちが歌っている映像を目にしたの。エルヴィス・プレスリーなど、アメリカの人気アーティストの曲をカバーしていて、すごく革新的だと感じました。訛りのある英語を話す3人の韓国系女性が、敷居を超えて西洋の文化に飛び込んでくるなんて、すごく大胆で度胸がいるでしょう? 朝鮮戦争をはじめさまざまな壁を乗り越え、さらに3人とも20種類くらいの楽器を演奏できる。同時に私は、いままで語られてこなかったストーリーにも興味がある。キム・シスターズに惹かれるのは、人々に知られていない歴史の一部だからです。見落とされ、話し合われてこなかった事柄を、映画を通してできるだけ広く伝えるという責任をたまに感じることがあるんです。
――あなた自身の生活をお聞きします。劇作家のノラのように、ニューヨークのブルックリンで長い間過ごされていたのに、子育てのために西海岸の豊かな牧草地に引っ越されたと聞いています。ヤギを飼っているという噂は本当ですか? また、日々大切にしていることを教えてください。 声を大にして言うけど、決して農場には暮らしていないわ、それは私には無理(笑)。でもニューヨークから、ロサンゼルスの牛の放牧に使われていた土地に引っ越したことは事実。だから生活はがらりと変わりました。そして、ヤギではなく、鶏を飼っているの。大きな庭があり、ブルックリンの頃よりもスローで静かな日々を送っています。いまは自宅での穏やかな生活とハイペースで緊張感のある俳優業とで、いいバランスが取れている。オフの時は、大きな帽子と手袋を身に着け、シャベルを持ってハーブ畑で作業をすることで、心を満たしてリフレッシュしているの。