北海道の宿泊税条例成立 紛糾から修正で一転 2026年導入めざす
北海道が提案していた宿泊税条例案が12日、道議会で賛成多数で可決された。異なる課税方法で導入済みの倶知安町の同意を得ぬままの提案が反発を招いたが、同町の方式を尊重して修正し、成立にこぎ着けた。ただ、合意からわずか2日の可決に、拙速との批判は残った。 【写真】宿泊税条例が成立 なぜ知事は「ゴールでなくスタート」? 道が提案した条例案は、宿泊料金に応じて1人1泊100~500円の3段階の税額を設定する「段階的定額制」。これに対し、2019年に導入済みの倶知安町は「定率制」を採用している。宿泊者を対象に課税する「定額制」に対し、定率制は施設を対象とするため、同町は「徴収する宿泊事業者の負担が大きい」と訴えていた。 鈴木直道知事は、前回定例会(9~10月)で、条例案の提案までに同町と調整し、合意できる考え方を示すと答弁していたが、合意できぬまま今定例会に提案。一般質問や予算特別委員会では、同町との議論を打ち切ったことへの批判が相次ぎ、答弁内容を守らなかったことに「議会軽視」とのヤジも飛んだ。 会期末が迫った10日、同町が段階的定額制での「道税相当額」を道に納めることを条件に、道条例の適用外とすることで両者が合意。これを受け、翌11日の道議会総務委員会で自民、公明の議員らが提案した修正案が賛成多数で可決された。 本会議で反対討論に立った池端英昭議員(民主)は、議論が不十分で拙速として、道に条例案を撤回し、十分な協議後に修正案を再提出することを求めた。26年4月の導入をめざす道を、期限ありきで十分な理解を得て進めようとしていないと批判。「議会軽視、不誠実きわまりない対応」と指摘した。 鈴木知事は閉会後の会見で、条例案を撤回して再提案する方法を選ばなかった理由について、提案後の扱いは議会の権限とした上で「導入スケジュールなどを考えると、早期に条例を成立させたく、議会に協力を求めた」と述べた。 法定外目的税の宿泊税を導入するには総務省の同意が必要になる。今後、道は同意を得た後、周知期間を経て、26年4月の導入をめざす。同町が納める「道税相当額」の算出方法などは未定で、他の自治体との公平性を担保できるかも課題となる。(長谷川潤) ■札幌市でも条例成立 札幌市の宿泊税条例案が11日、市議会本会議で賛成多数で可決された。 宿泊料金に応じて税額が変わる「段階的定額制」。市内のホテルや旅館などを利用する宿泊者に1人1泊あたり▽宿泊料金が5万円未満なら200円▽5万円以上は500円を課税する。修学旅行や学校行事での宿泊は免除される。 今後、2026年4月施行を目指し総務省との協議や準備を進める。条例には、5年ごとに見直しを行い、結果に基づいて必要な措置を講じるとも盛り込まれている。 税収は観光振興にあてられ、2018年度ベースならば約27億5千万円を見込んでいる。(原知恵子)
朝日新聞社