三浦知良の本音…日本は「まだ本場じゃない」 描く日本サッカーの未来とW杯優勝「イエスともノーとも」【独占インタビュー】
日本代表のW杯優勝は?「イエスともノーとも言えないかな。ただ…」
さらに冷静な視点で、W杯の変化も口にした。ブラジル時代から強く意識して見続けているだけに、大会の様変わりも感じている。かつては世界中から厳選された国だけが出場し、多くの国にとっては「見るだけ」の大会だったが、今は大会の巨大化で出場することへのハードルが下がっているのも確かだ。 「昔はアジアの枠も1か2。ドーハ(94年米国大会予選)の時も2だった。2でダメで、3.5(98年フランス大会のアジア枠)になって日本は出場できた。今も2だったら、熱いよね。もちろん、2位以内の実力はあっても、何が起こるか分からない。アジアカップ(ベスト8)みたいなこともあるから」 7大会連続でW杯に出場している日本だが、3回はグループリーグ敗退。4回はグループリーグを突破したが、いずれも決勝トーナメント1回戦(ベスト16)で敗れている。グループリーグでドイツとスペインという優勝経験国に勝った22年カタール大会も、トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦負け。結果的に「ベスト16の壁」を超えることはできなかった。 「決勝トーナメントは1回でも勝つのが難しい。それを4試合続けて勝たなければいけないんだから、優勝は大変だよね。まずはベスト8に入ることじゃないかな。そうでないと、真実味をもって語ることはできないよ」 25年後の大目標。カズは「これだけ身体を酷使しているし、生きていないよ」と苦笑いしながらも、楽しそうにW杯を語った。ブラジルから帰国した90年7月、読売クラブ(現東京ヴェルディ)入り会見で目標に「W杯出場」を掲げた時は、23歳の「夢物語」や「妄想」にさえ思われていた。しかし、時代は変わった。日本サッカーは成長し、強くなった。W杯を語れるようになったのだから。 「実際に『優勝できるか』と質問されたら、イエスともノーとも言えないかな。ただ『W杯優勝』を目標にできるようになったのは凄いこと。昔は『W杯出場』だって無理だと言われていたんだから。そう考えただけでも、日本サッカーは変わったし、すごく進化したということなんですよ」 日本サッカーの急成長をピッチの中から見てきた。その進化を肌で感じているからこそ、カズは嬉しそうに言った。 [著者プロフィール] 荻島弘一(おぎしま・ひろかず)/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。
荻島弘一/ Hirokazu Ogishima