ザックJはなぜ後退してしまったのか?
本田の位置を変えた柿谷の台頭
一方で、柿谷の台頭は本田のプレー位置を変えた要因にもなっている。コンフェデレーションズ杯でサイドからの単純なクロスによる攻撃に限界を感じた本田は、8月のウルグアイ戦から意図的に自らのプレー位置を中央に固定するようになった。そのタイミングで登場したのが柿谷だった。 セルビア戦でも本田が中央でプレーしようとする意図は顕著であり、ベラルーシ戦でも下がりはしてもサイドに開くことはあまりなかった。遠藤が「今日はあえて中央の狭いところでやろうとしていた」と話したことと、本田が「W杯に向けて新しいことを構築しているところ」と言ったのは同じことを指しているのだ。新しい取組みを、新加入の選手と一緒にやるのはやはり簡単ではない。
試合勘が鈍っていた香川
そして、今回はマンチェスター・ユナイテッドで出場機会を失っている香川が、本人も思っていた以上に試合勘が落ちていたことも、2試合連続ノーゴールの大きな要因だ。 この点に関しては香川自身が、「うまく試合に入れなかった。フィジカルコンディションもボールタッチも全部ダメだった。チームでポジションを勝ち取らないといけないということを痛感した2試合だった」と言葉を噛みしめるように言っていた。聡い香川のことだ。チームでポジションを奪うためにさらなる努力を重ねるのは間違いないし、今後は年内の残り2か月あまりの期間で自身の状況をしっかり見つめ、W杯イヤーにどこでプレーするかを決めるだろう。
ザック「結果が出なくても自信を失わず」
ザッケローニ監督は「選手たちにも言っているが、この2試合と11月の2試合を合わせた欧州での4試合は、結果が出なくても自信を失わず、自分たちの課題を解消していくために前向きに臨もうと伝えている」と話した。 本田は「今、選手同士で意見が出ているのはいいことだと思う。どんどん出すべきだし、正直、ぶつかるのが遅いぐらいだと思っている。前回のW杯では、これを(本大会直前の)スイスのキャンプで行った。だからそこは少なくとも進歩している。このままだと負けるぞと、みんなが危機感を抱いて話し合っているのは進歩だし、そこに妥協はない」と言い切った。 一つ上へ行くための苦しみの時期。我慢の向こうにW杯でのゴールと勝利があると信じ、ザックジャパンは奮闘している。 (文責・矢内由美子/スポーツライター)