ザックJはなぜ後退してしまったのか?
ザックジャパンの東欧遠征は、セルビア戦0-2、ベラルーシ戦0-1と、2試合とも無得点で連敗し、全日程を終えた。 世界ランクはセルビアが43位、ベラルーシが80位と多少の差はあるが、いずれにせよ相手は2つともW杯出場権を逃した国。連敗という結果はともあれ、香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)、本田圭佑(CSKAモスクワ)に加え、柿谷曜一朗(セレッソ大阪)という新たな才能が加わった日本代表攻撃陣が決定機を作ることさえもままならず、1点も取れずに終わったのはショッキングな出来事だった。 W杯を8か月後に控えた時期に、なぜ、チーム全体が後退しているように見えるのか。ザックジャパン初の2試合連続無得点負けに終わったのはなぜか。
メインテーマは「アウェイでの強さ」だった
まず、最初に整理しておきたいのは、今回の東欧遠征のメインテーマとなっていたのが、「苦手とするアウェイでの強さを身につけ、W杯に向けてチームの成長を図る」(アルベルト・ザッケローニ監督)という、ベースアップの部分にあったということだ。 これに関してはGK川島永嗣(スタンダール・リエージュ)が、「目の前の結果だけにこだわることもできるが、今はまだそういう時期ではない。自分たちのキャパシティーを攻守の面で5%でも10%でも上げることに取り組む時期だと思う」と噛み砕いて説明している。
無得点の伏線は”新しい試み”
当然、攻撃においても自分たちのポテンシャルをさらに高めるための取組みがなされており、ピッチ内ではいくつかの新しい試みが見られた。これが、「2試合無得点」の伏線となったのだ。 ベラルーシ戦後、遠藤保仁(ガンバ大阪)はこう話した。「今日いろいろなことにトライした。あえて狭いところで回したり、(本田)圭佑が下がってきたり、いろいろやった」 遠藤の言葉通り、試合を見ているといろいろなことにチャレンジしていたことは窺えた。まずは遠藤自身が、セルビア戦より高い位置に行こうとする意識が見えた。香川、本田との3人で流れの中でポジションチェンジをする場面もあった。さらには、左サイドで攻め切るというザックジャパンの従来の戦術から離れ、遠藤が右サイドに流れることによって、右で起点を作ろうとするプレーもあった。