天王星の衛星アリエルに「地下海が存在」か、JWSTで証拠発見
天王星を公転する氷衛星アリエルの内部に、液体の地下海が存在する可能性があることを示唆する、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の最新の観測結果が発表された。 【画像】天王星の衛星アリエル。惑星探査機ボイジャー2号撮影 アリエルは、確認されている天王星の衛星27個のうちの1つ。天王星は太陽から7番目に位置する、太陽系で3番目に大きい惑星だ。アリエルとともにウンブリエル、チタニアとオベロンという天王星の4衛星は、太陽系で海を探すプロジェクトの一環として、以前より科学者の関心を集めている。 アリエルは、英劇作家ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『テンペスト』の登場人物にちなんで命名されている一方、チタニアとオベロンはシェイクスピアの『真夏の夜の夢』にちなんで名づけられている。 ■二酸化炭素 現在進行中の観測プロジェクト「Moons of Uranus(天王星の衛星群)」の一環として、今回の研究ではJWSTを用いてアリエルを含む天王星の4つの衛星を21時間観測し、アンモニア、有機分子、水や二酸化炭素の氷(ドライアイス)などの痕跡を探索した。 天王星の軌道領域では、ドライアイス(固体二酸化炭素)が存在する可能性は低いと考えられる。太陽からの距離が太陽地球間の約20倍離れているこの領域でも、ドライアイスは昇華して気体となり、宇宙空間に飛散するからだ。 しかしながら、峡谷や地溝帯や平坦領域などがあるアリエルの表面にドライアイスがあることが、過去の調査で明らかになっている。ドライアイスは特に、潮汐固定の状態にあるアリエルの公転方向の常に逆を向いた側(後行半球)に濃く堆積している。 ■液体の海? このドライアイスの起源は明らかになっていない。だが、天文学誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載された今回の研究論文では、アリエルの表面下にある液体の海が起源である可能性があると主張している。過去の研究で提唱されている別の仮説では、天王星の磁気圏内で放射線によって分子が分解される「放射線分解」で、アリエルのドライアイスが生成・供給されるとしている。 さらに、アリエルの堆積物の中から、もう1つ謎の物質が見つかった。一酸化炭素の明確な兆候が初めて確認されたのだ。「それは、そこにあるはずのないものだ」と論文の筆頭執筆者で、米ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所のリチャード・カートライトは指摘する。「一酸化炭素が安定するには、絶対温度30ケルビン(マイナス243度)まで温度を下げなければならない」という。アリエルの表面温度は平均して、それより65度前後高くなっている。