北海道東川町「人生の学校」参加する男女の“目的” 学び直しの機会は社会全体としても重要になる
そうですね、この3年間はまるで実験をしているかのような時間でした。最初はショートコースを提供しながら、ワーケーションのような形式に変えたりして、実際に日本でどんな方々が来てくれるのかを探りながら進めました。私はこの東川に移住してきたよそ者だったので、地域の人々とどのように協力しながら学校を作り上げていけるかを模索していました。明確な答えがあるわけではなく、試行錯誤しながら前に進んでいく感じでした。
―コロナ禍とコロナ後の変化はありましたか? コロナ禍の間、2022年頃までは多様な層の方々が参加していました。仕事で忙しい人やキャリアブレイク中の人、大学生なども来ていました。ワーケーションコースでは当時リモートワークが進んでいたこともあり、比較的忙しい方々も来ていました。去年からは、徐々にキャリアブレイク中の方や仕事を一旦休んでいる方が増えてきました。リモートワークが推奨されなくなってきているので、その影響を感じますね。
―ショートコースは参加者にとってどのような変化をもたらすのでしょうか。 ショートコースでは、8日間で4回の授業を行いますが、地域の方々とコラボレーションして授業を作るスタイルをとっています。現在では30人以上の地域の方々が協力してくれています。写真家、テキスタイルデザイナー、ヨガの先生など、さまざまな方々が参加しています。 参加者の声として「忙しい仕事の中で価値観と目的、自分が何を大事にしてたのかわからなくなっていたのが、参加したことで明確になりました」というのがショートコースでも出てきています。興味深いのが、短期のコースでは人の良い部分にフォーカスする傾向があることです。多様な価値観の人との繋がりができたことを喜ぶ人が多いですね。
―社会人が休むことに関して日本はネガティブな印象を持っている人が多いと聞きますが……。 そうですね、休むということよりも学ぶことに対してもう少しポジティブな捉え方が広まるといいなと思っています。リスキリングに偏りすぎず、自分がどう生きたいかを考えることが重要だと思います。とりあえず何か学ばなきゃというのではなく、自分の生き方を見つめ直す時間も大切だと思います。 ―今後の展開を教えてください。 新校舎が完成したので、その空間を活かした学びを提供していきたいと思っています。ショートコースや、数カ月の長期コースも今まで以上に展開していきたいと考えています。また(大人が学ぶことの)文化を醸成する意味で個人だけでなく法人や行政とも連携し、地域との仕事の在り方を考えるプログラムも作っていきたいと思います。また将来的には他の地域にもこういう学校が増えてほしいと考えています。