老後は毎月3万円の赤字に? 貯金500万円あれば働かなくても暮らせる?
厚生労働省の資料によると、全世代で平均年収が最も高いのは50代です。しかし60代になると、役職定年や定年退職をする年齢ということもあり、年収が減る人が多いです。役職を下り、収入が減り、気持ちが落ち込む・愕然とする、働く意欲がなくなる、という人も少なくありません。 Aさんもその1人。役職定年後、すっかり働く意欲がなくなり、贅沢しなければ退職金と年金で暮らしていくことは可能か、考えたいとのこと。Aさんは中堅企業勤めで役職定年前の年収は800万円、妻は専業主婦、貯金は500万円ほど、退職金は1000万円もらえるだろうとのことです。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
無職世帯の夫婦の可処分所得21万3042円VS消費支出25万959円
生命保険文化センターによると、2人とも65歳以上の無職世帯の1ヶ月の可処分所得は21万3042円(主に公的年金)、これに対して、消費支出は25 万959円、差し引き1ヶ月約3万1000円が不足するという統計が報告されています。 この不足分を貯蓄で補うことになりますから、Aさんの場合は500ヶ月、40年余りとなって、計算上は暮らしていけることになります。
計算上はあくまでシミュレーション、不測の事態も考慮にいれるとやや不安
この計算はあくまで、過去の事例から割り出した平均的なケースを基にしています。将来を約束するものではありません。 将来どのような状況になるのかはわかりませんが、例えば足腰が不自由になって、保険では賄えないサービスを利用しなければならなくなる、自宅を大胆にバリアフリー型にリフォームしなければならなくなる、物価上昇が今よりもっと加速するなど、不確定要素は枚挙にいとまがありません。 それらをすべて想定するのは行きすぎであったとしても、不測の事態を考慮にいれるとやや心もとない印象があります。
数字的な目標を上げても、働くモチベーションがなければ意味はなし
では、「あともう少し働いたほうがいいから、勤務を続けてほしい」という結論に達したとしても、働くモチベーションがないままで就労するのは、精神的にも肉体的にも大きな負担を背負うだけになります。 そもそも「仕事をする」というのは、収入を得るという目的もありますが、それ以上に「自分の存在価値を確認する」「社会での役割を意識する」ことを通じた自己実現の営みであるということを認識することが重要でしょう。 それを考えると、役職定年を「Aさんの企業での役割が評価されない」と解釈していると考えられるため、Aさん自身が「働くことの意義」を見つめなおす時間が大切でしょう。この時、Aさん自身これまでの履歴だけで振り返ってしまうと、過去の上り調子だった実績との比較に陥ってしまう恐れがあり、今後の前向きなライフプランを描くのは難しくなるかもしれません。