【大学野球】3年生ながら早大野球部を背負うオーラを放つ右腕 背番号「11」を着ける伊藤樹
エースとしての「美学」
今春を通じて、先発した試合はすべて7イニング以上を投げ、ゲームメーク能力に長ける。ハイライトは中1日で先発した春の明大3回戦。延長11回を完封(5対0)で、明大から19年秋以来の勝ち点を挙げ、7季ぶりの天皇杯奪還のポイントとなる一戦だった。伊藤樹は「年間無敗」を掲げ、今春は3勝(防御率1.49)、今季も5試合で4勝(防御率1.46)。さかのぼれば、先発に定着した2年秋も4勝1敗、防御率1.99と安定感が光る。 小宮山監督は立大3回戦の試合後、好投した伊藤樹について褒め称えた。 「十分にしっかりとしたピッチングをしてくれた。さすがだな、と」 1回戦と3回戦で先発し、なおかつ、結果を残す。伊藤樹は今春から背番号11を着ける早稲田のエースとしての「美学」を語った。 「(中1日で、体調は)回復しないものです……(苦笑)。当たり前のように、投げる。当然のように、当然あるつもりでいる。それが仕事なので……。いつも高いレベルの中で投げるのが、持ち味。中1日に関係なく、当たり前のレベルを上げていきたい」 早稲田の背番号11とは、複数シーズンの活躍を経て、首脳陣、部員から認められた上で着ける慣例がある。小宮山監督は22年の入学以来、伊藤樹の潜在能力を高く評価していたが、取り組みの甘さを何度も指摘してきた。そこで、自覚を促すために、この春、伊藤樹に「11」を託した。立場が人を変えたのだ。 背番号11で通算11勝目。第6週は春秋連覇への天王山となる明大戦が控える。「春はああいう形で勝ちましたが、秋に負けると、負けたという形で終わってしまう。連勝で勝って終わらせたい」。3年生ながら、すでに早稲田大学野球部を背負うオーラを放っている。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール