1982年に旭通信社への入社をきっかけに広告業界へ[第1部 ‐ 第1話]
アニメを武器に自ら道を切り拓く旭通信社との出会い
佐藤:テレビ局の番組広告枠は、基本的には大手総合代理店がすでに広告枠の大部分を買い付けて押さえています。テレビ局側にとっては、広告代理店が広告枠を一括で買ってくれたほうが売れ残りがなくなりますし、万が一、広告主が広告費を支払えなくなっても広告代理店が費用を先に払っているので、テレビ局側が取りっぱぐれる心配はありません。広告代理店が不動産の保証会社のような役割を果たす形で、この商習慣が確立されたのだと思います。 また、広告主から直接発注を受けると、コミュニケーションが煩雑になりがちです。そのため、広告代理店が一括管理してくれる方が、効率的で助かるという側面もあったのではないでしょうか。 このような背景から、テレビCMの発注は広告代理店を通すことが一般的になり、保証会社のような機能を果たせる経済的な基盤がある大手広告代理店だけが、テレビ局などの媒体社と取引口座を持てるようになったのです。これは、広告主、広告代理店、媒体社の3者のニーズが一致して出来上がった業界の仕組みであり、大手広告代理店が大手となる理由の一つだったと言えるかもしれません。 旭通信社がおもしろかったのは、そうした大手広告代理店に割り込むために、どうすれば良いかを考え、アニメなどのテレビ番組の企画をテレビ局に持ち込み、19時台のアニメ番組の広告枠をあらかじめ買い付けて押さえるという戦略を積極的に行っていた点です。これにより、主に玩具メーカーやお菓子メーカーに広告枠を売り、少しずつテレビ業界に食い込めるようになっていきました。 『8マン』『スーパージェッター』『マジンガーZ』などから始まって、僕が入社した頃に新人研修のときに見せられたのが『宇宙刑事ギャバン』でした。僕が入社する数年前に『ドラえもん』が始まり、「ドラえもん景気」と言われるほどの大ヒットを記録したそうです。『ドラえもん』の成功により、会社の業績が急上昇し、新卒でもボーナスが良かったと聞いています。アニメ以外でもタモリが司会をした『今夜は最高!』も旭通信社が企画していたと記憶しています。 こういったテレビ番組の企画は「ラテ企」(「ラジオ・テレビ企画」の略)という部署が担当していて、非常に興味はあったのですが、海外向けの広告宣伝をやっている国際部も魅力的でした。僕は少し変わったところに身を置きたい性格なので、「海外向けの広告ってどんなことをやっているんだろう?」と興味を抱き、会社には「配属先は国際部志望です」と伝えたところ、案の定、国際部を志望する人がほとんどいなかったので、希望通り配属されることになりました。 次回は10/3(木)公開予定(隔週木曜日更新)です。