「やっぱり野球の神様はいた」 磐城・木村前監督 特例ノック、うれし涙 交流試合
夢のような7分間だった。磐城の試合前練習でノッカーを務めたのは、今春センバツが中止となった後に3月いっぱいで他校に転勤した木村保・前監督。「人生で一番、濃密で特別な時間。時が止まったようだった」と振り返った。 【写真で見る】磐城vs国士舘の接戦 まるで打球を通じて語りかけるかのように、丁寧にノックを打っていく。思い返すのは、教え子たちと過ごした大切な時間だ。台風19号での地元いわき市の水害、センバツ出場決定、コロナ禍による大会中止、そして自身の転勤。「つらいことばかりが多い子たちだった」。あまりにふびんで、何度男泣きしたことか。 だが、「やっぱり、野球の神様はいた」。聖地での試合が実現し、関係者の尽力で自身の同行もかなった。そして夢舞台に立ち、目の前にいるのは頼もしく成長した選手たちだった。 昨秋は公式戦10試合で21失策と守備が課題だったが、今回の甲子園で失策は一つ。七回1死二塁では、右前打を捕球した右翼手・樋口が本塁へ好返球してアウトを奪うなど、ファインプレーを連発した。 1971年夏の甲子園で準優勝し「コバルトブルー旋風」を巻き起こした磐城。惜敗にも、東北伝統の「粘り強い姿を見せてくれた」。うれし涙を流しながら、教え子たちをたたえた。【岸本悠】