蜜月の中国とベネズエラ「独裁国家との付き合い方」ウォッチャーが解説
■「クリスマスを10月に繰り上げる」 マドゥロ氏は、野党やその支持者を徹底的に弾圧し、当選を既成事実にしようとしている。一方で国民を懐柔しようとしている。カトリック教徒が多い国民に向けて、マドゥロ氏は「12月のクリスマスを、10月に繰り上げる」と宣言をした。 ベネズエラでは、政府がクリスマスに合わせ、国民に食べ物などを配布してきた。大統領選挙のあとの混乱が続くなか、国民の不満を和らげる効果を狙っているのだろう。 マドゥロ氏は2013年に暫定大統領に就任したが、実は、前回2018年の大統領選挙でも、そのプロセスの正当性に、国際社会から疑義を呈されていた。大統領の任期は6年。来年1月から3期目に入るから、このまま行くと、少なくとも2031年までは最高権力者の地位にある。 日本政府は9月4日に、外務省が談話を発表している。「ベネズエラの中央選管は選挙結果の信頼性を確保できる、必要な情報を示していない。情報を公表するよう求める国内外の声を、我が国(=日本)も共有する」。欧米など多くの国際社会と同じ立場だ。 ■マドゥロ氏を支援する中国の存在 マドゥロ氏はまさに独裁者だが、多くの人が選挙結果を疑うのに、これほどまでの独裁体制を敷けるのはなぜなのだろうか? 理由の一つはそんな大統領を支援する国があることだ。ベネズエラは原油の埋蔵量が世界一。石油掘削については長くロシアが支援してきたが、近年では中国がそうだ。中国はベネズエラで採掘された石油の最大の輸入国でもある。価格の安い石油を求めて、中国はベネズエラに多額の投資、それに政府への多額の融資を繰り返してきた。 「政権交代が起きたら、これまでの投資が無駄になったり、関係が覆されてしまう」――。中国にはそんな懸念もある。わかりやすい例を挙げよう。ベネズエラの中央選管が大統領選挙の結果を公表した時のこと。その正当性に国際社会は大きな疑念を持った。だが、中国は違った。わずか数時間後に、習近平主席は、勝利宣言したマドゥロ氏にこんな祝電を贈っている。