レスリング世界選手権が開幕!男子2種目でメダル獲得し東京五輪代表内定を勝ち取るのは誰か?
また女子の日程の終盤と重なる9月19日から始まるフリースタイルでは、最初に2017年世界王者の57kg級の高橋侑希(ALSOK)が登場する。4年前、リオ五輪出場がかかった世界選手権では、期待されていたにもかかわらず9位に沈み、権利獲得を逃した。その後の二次予選以降は日本代表からも遠ざかっていた。 「あの頃は、日本代表としての自覚が本当に足りていなかった」と振り返る高橋は、その後の4年間で、日本男子のお家芸である軽量級の代表の重みをよい意味で受け止めている。昨年の世界選手権は、その前年から順位を2つ下げて3位。二年連続表彰台に上がったのは誇らしいことだけれど、それで満足しては東京五輪の金メダルが遠のくと、あくまで目標はてっぺんだ。 そして2018年の世界選手権で日本の男子レスリング世界王者の最年少記録を更新した65kg級の乙黒拓斗(山梨学院大)も大学の先輩にあたる高橋と同じ19日から試合が始まる。今年は、春先にケガをした影響もありしばらく不調で、日本代表に決まるまで時間がかかったが、現在はすっかり回復して自信も取り戻している。60kg台の階級では、選手の新陳代謝が激しく、いつもギリギリの競り合いが繰り広げられ、同じ選手が続けて世界王者で居続けるのは難しい。そこに乙黒は挑み、ふわりと乗り越えて東京五輪まで頂点で居続けるのが目標だ。 今回のフリースタイル代表では唯一の五輪経験者である高谷惣亮(ALSOK)は、当時のフリースタイルでは最年少で挑んだ2012年ロンドン五輪から数えて3回目の五輪出場を、86kg級へと階級を上げて挑む。 「いまが一番、レスリングが楽しい」と言う高谷は、大雑把な外国人選手がダメージを残しそうな試合当日朝の計量も、リラックスしてよい形で乗り越えられそうだ。ベテランだが、この階級での世界選手権は初めてのこと。日本チームからビギナーズラックをつかむ選手がいるとしたら、高谷ではなかろうか。 フリースタイルでもっとも注目を集めているのは、2年前から続く金メダリスト同士の頂上決戦だ。86kg級リオ五輪金のアブドゥルラシド・サドゥラエフ(ロシア)と97kg級リオ五輪金のカイル・スナイダー(アメリカ)の顔合わせだ。1996年生まれのサドゥラエフと、1995年生まれのスナイダーは、リオ五輪までは隣の階級でそれぞれ頂点を目指していた。五輪後、ルール変更にともなう階級変 更がほぼ確実になったのをうけ、サドゥラエフはルール変更決定前の2017年から97kg級に階級を変更。まだその階級のなかでは小さめに見えたが決勝まで進み、スナイダーと対戦して判定負けに終わった。 続く2018年世界選手権でも、決勝はやはり同じ顔合わせになったが、今度はサドゥラエフがタックルから粘るスナイダーをフォール。体幹が非常に強いスナイダーを相手にコントロールできたのは、ロシアンタンク(ロシア戦車)と呼ばれる豪快さに加え密着してからの粘り強さを持ち 合わせたサドゥラエフならではだろう。3度目となる2人の直接対決は、予想を上回るレスリングのダイナミズムを見せてくれることだろう。 (文責・横森綾/フリーライター)